いま内野小学校は?1

教育

*いま内野小学校は?(1)*

<「さくら学級」がミニトマト販売>

―苗植えから収穫・売り子体験まで―

―地元の露店市で、「おいしいですよ!」―

<20人が「さくらトマト」販売>

昨夏、ブログ「ウィズコロナ時代 いま学校は?」のシリーズで取り上げた新潟市の内野小学校(西区)のチャレンジが続いている。内野小は商社マンから新潟市の「公募校長」となった中村芳郎さんのリーダーシップの下、「特別支援学級の支援強化」などに地域と共に取り組んでいる。7月1日には、内野地域で1日と15日に開かれる露店市の一角を借り、特別支援学級(さくら学級)の子どもたち約20人が、自らも苗植えをしたミニトマト「さくらトマト」を販売した。この事業には、内野小PTAらが結成し、地域づくりに取り組む一般社団法人「Smile Story(スマイル ストーリー)」が全面協力した。

写真(左)=「さくらトマト」の販売所づくり。(右)販売所に貼られた手書きのポスター

      写真=「さくらトマト」のパッケージも手書き

<「いっぱい売れたよ!」>

さくら学級の子どもたちはこの日、午前9時過ぎに学校近くの露店市の中に設置された「さくらトマト」販売テント付近に到着。暑さに負けないよう、2グループに分かれて販売作戦に取り組むよう準備に入った。興味を持った買い物客が集まり出した9時20分ごろ、いよいよ販売を開始。「おいしいですよ!」と声を張り上げる売り子さん役や、「どうやってミニトマト販売まで漕ぎつけたか」を手づくりのパネルで紹介する説明班などに分かれ、役割を分担して取り組んだ。露店市に来た人は、子どもたちのかわいい笑顔と呼び込みにつられるように、多くの人が「さくらトマト」の販売テントを訪れ、1袋(約20個入り)300円の「さくらトマト」を買い求めた。用意された70袋近くが、あっとう言う間に売り切れた。その間、約20分。子どもたちは上々の反応に「いっぱい売れたよ!」と嬉しそう。苗植えから半年を掛けた「ミニトマト販売」は、さくら学級の子どもたちに大きな実りをつけたようだ。

写真=左から販売風景。活動の様子をテレビも取材。同じくテレビクルーが「さくらトマト」を買った親子を取材

<特別支援教育を地域にも浸透>

内野小学校は「いま学校は?」の9回目で紹介したように、「特別支援教育の充実」を学校課題の一つに上げ、重点的に取り組んでいる。2007年度にLD(学習障害)、ADHD(多動・注意欠如)などを対象とする「特別支援学級」が開設されて以来、西区の特別支援教育の拠点校に位置づけられ、普通学級の子どもたちも時として学べる「通級指導教室」も設置されている。内野小は、学校の周囲に桜の木が多く、「やさしさあふれる『さくら学校』」を学校のモットーに掲げている。その内野小の代名詞とおもいうべき「さくら」の名で呼ばれる「特別支援学級」が今年度は9学級置かれ、「いろんな子がいて、いろんなスタイルがある」との考え方を地域にも浸透させながら、地域と共に特別支援教育を充実させている。

そんな内野小が今年から新たに取り組んだのが、「さくら学級」の農業体験だった。農業を体験することで子どもたちの感性を伸ばそうとの試みで、体験の場はお隣の西蒲区にある「エンカレッジファーミング」の植物工場だ。エンカレッジは、県内最大級の2ヘクタール規模となる植物工場でミニトマトを通年栽培している。土を一切使わない「養液栽培」でオランダの最先端技術を使う「未来型農業」の実践地だ。

<子どもたちの脇に、地域の大人の姿>

中村校長がエンカレッジの近藤敏雄社長に依頼して、1月下旬にはミニトマトの苗植えを14人の子どもたちが体験した。(この様子は、ブログ「にいがた 食との農の明日」の15回目に紹介)さらに5月の大型連休明けには、おいしそうに育ったミニトマトの収穫を子どもたちが体験し、ミニトマトの美味しさも味わった。子どもたちの農業体験には2回とも、PTAや地域の大人たちの姿があった。さらに中村校長は、内野の地域づくりのため新たに結成された「スマイル ストーリー」の力を借りながら、さくら学級の子どもたちの社会体験として、露店市での「ミニトマト」販売に取り組みことを決めた。「スマイル ストーリー」は内野小のPTAを母体にした地域づくり団体で、移動式こども食堂「さくら食堂」の運営や海岸清掃に取り組んでいる。

中村校長らは、エンカレッジからミニトマト提供の協力を得、内野露店市の関係者の了解も取り付けて、「7月1日・露店市での販売」を決めた。それからは、子どもたちが露店市の下見をしたり、説明用のパネルを手書きしたり、地域の方たちと一緒に1日に向けての準備を進めてきた。前日、ミニトマトがエンカレッジから届くと、さくら学級の子どもたちがみんなで、ミニトマトを20個ずつ袋に入れ、手書きの絵を袋に添えて最後の準備を終えていた。

<まだ続く「トマト・ストーリー」>

この日はお天気にも恵まれ、予想以上の速さで販売が終了。子どもたちは「やった!」「やったね」と喜びを分かち合っていた。中村校長は「これで1月の苗植えから始まって、収穫・味見、今度の販売まできました。ミニトマト・プロジェクトはこれで完結することにしていたんですが、地域のお店で子どもたちのミニトマトを使った料理を出そう、との話が持ち上がり、まだトマト・ストーリーは続きそうです」と笑顔で語っていた。

写真=今回、会場を提供いただいた内野の露店市の様子

<青空記者の目>

内野小学校の取り組みは、昨年からさらに進化していた。中でも、特別支援学級の子どもたちを地域で支援していく取り組みは注目に値する。この日も露店市に来た多くの大人たちが子どもたちに声を掛け、子どもたちのミニトマト説明に耳を傾けていた。

いつの間にか、内野小PTAを母体にした一般社団法人「スマイル ストーリー」も誕生し、既に移動型こども食堂「さくら食堂」が1月から同小体育館前で月1回の活動を始め、地域の海岸清掃を定期的に行う音頭を取るなど、具体活動も始まっている。「スマイル ストーリー」の取り組みについては、次のブログ「いま内野小学校は?」で紹介したい。

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