茶の間再開5

*「実家の茶の間・紫竹」再開5*

―「大事な場所だから、みんなで守っていこう」―

2020年6月8日

新潟市の「実家の茶の間・紫竹」が再開されて2週目を迎えた6月8日(月曜日)。この日も午前中から10数人が再開されたみんなの居場所に憩っていた。約束通り、正午でいったん茶の間を閉め、テーブル・机をはじめ備品をアルコール消毒する。「とにかく、衛生面には気を付けなければね。大事な場所だから、事故が起きないようにしていく。お楽しみのおやつも当面は飴だけ。お菓子だと、どうしてもマスク外して食べることになりますから」。運営委員会代表の河田珪子さんはこの日も当番さんらと衛生面に最大の注意を払っていた。

<支え合い推進員がこの日もやってきた>

地域包括ケア推進モデルハウスの「実家の茶の間・紫竹」には、地域包括ケア構築の役割を担う「支え合いのしくみづくり推進員」(全国では「生活支援コーディネーター」と呼ぶ)が毎回のように顔を見せる。この日も二層(日常生活圏で複数の中学校区を基本とする)の推進員が午後からやってきた。北区(松浜・南浜・濁川圏域担当)が菅原妙さん。中央区(宮浦・東新潟圏域担当)が滝澤清香さんだ。滝澤さんは保健師でもある。菅原さんは地域の老人クラブから「カラオケを再開してもいいか」と聞かれ、弱っていた。「その地域の老人クラブには市のガイドラインがまだ行ってないみたいなんです。たまたま聞かれたから、『まだ、少し我慢じゃないですか』と言ったんですけど、きちんと答えられなくて…」と菅原さん。

すると河田さんが「ここには、老人クラブの役員をやっている方が何人も来ていらっしゃいますよ。あの方もそう。老人クラブの様子を聞いてみたら」と提案した。早速、菅原さんと滝澤さんが隣のテーブルの女性に聞きに行った。88歳のAさんで、地域の老人クラブの会計を担当している。「老人クラブの活動は、もう少し我慢ですよ。老人クラブは楽しいし、カラオケも旅行もみんな行きたがっているけど、まだ我慢ね。そりゃ、老人クラブも早く再開して、色んなところ見に行きたいですよ。それはすごく勉強になるからね。でも、まだ早い」とAさん。「私らはここが再開されて、みんなの顔が見れて楽しいし、いろんな話が聞ける。ここが休みの間は、うちにいてテレビ見ているだけでしょ。私らは、実家の茶の間があるから、色んな情報も教えてもらってきた。ここには老人クラブも自治会の人もくるから、互いに様子を聞き合えるのね」とAさんは続けた。

<「紫竹ではこうしていますよ」と言える>

滝沢さんはAさんの話を聞きながら、「私らに『地域の活動を再開できるかね』って聞かれても、なかなか判断できない。私がよく実家の茶の間にくるのは、ここにくると色んな現場の話を聞けるから。ここで見聞きしたことを踏まえて、『紫竹ではこうしていましたよ』って教えてあげるだけでも、ありがたがられます」と言う。菅原さんも「各地の地域の茶の間では、イベント的にやっているところもあるけど、ここはイベントはやらず、みんなが思い思いに寛いでいる。それでいいんだ、と改めて思えます。茶の間ってなんのためにやるのか、その原点をもう一度考え直す機会になる」と言う。

そんな話に耳を傾けながら、河田さんは「大事なところ、大事な活動だから、土台となる衛生面は最大限のことをやっていかないと。私たちは携帯でも、替わる時はその都度、アルコール消毒しています。大事な活動だから、続けられるように最大限、気を配ることが必要ですよね。でも、『これはまだ早い』とか、『再開するためには、これをしなければ』と言うのはなかなか大変。嫌な役回りになりますから。役所言葉の意味を理解しながら、地域の参加者の負担をできるだけ軽くするやり方に言い換えていくことがこれから色んな方面で必要になるんじゃないでしょうか」と河田さん。

<「夏場は午後4時までやりたいね」>

「お昼を食べるのはもう少し我慢」。河田さんたちも、大切な地域の茶の間の活動をしっかりと守っていける態勢をつくりながら、一歩一歩前進していくようにしている。当面の課題は終了時間を午後4時まで延ばすこと。「今はまだいいけれど、梅雨明けになると午後3時は暑いですよね。お年寄りも暑さの中、お帰り頂くのは心配。何とか、午後4時までやれるようになると、よっぽどいいよね。どうすれば4時まで延長できるようになるか…。もう少し様子を見ながらみんなで考えていきましょう」。河田さんはお当番さんらと、次のステップに移ることを考え始めていた。

【青空記者の目】

「実家の茶の間・紫竹」には、老人クラブや自治会の役員をやっている方たちが利用者としてよく顔を見せていた。これは、河田さんたちが地域との絆を強くしようと、実家の茶の間を立ち上げた時から意識して取り組んだ成果だ。実家の茶の間の開業日以外に老人クラブなどが自分たちの会合に茶の間のスペースを利用することも当たり前になっていた。それが、情報の共有に役立ち、信頼関係づくりにつながっている。老人クラブの会計を務めるAさんが「カラオケは、まだ早いね」と言うのも、実家の茶の間でさまざまな情報を得ているせいかもしれない。

 

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