◆ブログ「青空リポート」・地方私大の役割②◆
―地方私大がなぜ弱っていくのか―
―国公立大には厚い支援、大きなハンディー
今回は、国公立大学や大都市圏の有名私立大学と比べて、なぜ地方の私立大学が少子化の影響を最も強く受けてしまうのか―その構図について考えてみましょう。
<国公立大と学納金で大差>
大学は運営主体でいくつかに分類されます。まず、国立大学法人。国から毎年、運営費交付金の配分を受けており、その結果、入学金・授業料などが私立大に比べて大幅に安くなっています。次に公立大学。都道府県や立地自治体が運営する大学です。歴史のある公立大もありますが、近年は定員割れとなって経営に苦しむ私大が公立化への転換を地元自治体に訴え、公立化されるケースが増えています。県内では長岡造形大がこの事例となりますが、一方で財政負担増などを理由に地元自治体が拒否するケースも出てきています。公立大は自治体からの運営費支援を受けられるため、私大と比べて学納金(入学金・授業料など)が低額です。
一方、私大は設立時には自治体など地元からの支援を受けるケースもありますが、運営は学納金で賄っているため、国公立大に比べて学納金が高額にならざるを得ません。このことが大きな要因となって、定員割れは地方の中小私大から起き始め、大都市圏の中小私大に波及してきました。教育関係者の多くは「今後、その傾向はよりはっきりしてくる。国公立大と私大では学納金で大きな差がある。ハンディキャップ・レースを強いられているので、私大は厳しい」との見方で一致しています。
<「国立大は授業料を150万円に!」>
これまでの常識に異を唱えた一人が慶応義塾大学の伊藤公平塾長です。伊藤塾長は国立大学(特に東大を念頭に)で学生1人あたりにかかる年間の教育コストの平均が年280万円なのに対し、学生負担は平均54万円であることを根拠に、「国立大は学費を150万円に引き上げを」と提言しました。「このことが国立大学と私立大学の健全な競争環境につながる。学費が支払えない低所得家庭には別途支援すれば良い」と伊藤塾長は述べています。(東大はこの動きを気に懸けたのか、2025年度の学部入学者から授業料を20%値上げして年額64万2960円にすることを決定しました。)
<公立大への支援も手厚い>
公立大学への自治体支援も手厚くなっています。例えば2014年に公立大学法人に移行した長岡造形大学をみると、私立大だった時の授業料が137万6000円だったのに対し、2024年度は入学金28万2000円(長岡市内在住者は14万1000円)、授業料は53万5800円となっています。この影響が大きかったのか、同大は2010年代初め、私立時代には定員割れしていましたが、近年は競争率が5倍台になり、もちろん定員を充足しています。
新潟県立大学と新潟県立看護大学を見ると、県内在住者の場合は入学金28万2000円(県外者は56万4000円)、授業料は53万5800円となっています。県立看護大学の学費と新潟青陵大学看護学部の初年度の学費を比べてみましょう。県立看護大では県内者の初年度納入金が86万5800円(県外者は114万7800円、その他雑費必要)なのに対し、青陵は合計で202万4600円(入学金30万円、授業料114万円、施設整備費31万円、実習費25万円、その他2万4600円)となっています。
<工科系もハンディキャップ・レース>
工科系も見てみましょう。2021年度に開学した三条市立大学の初年度納入金は三条市内在住者が入学金14万1000円(市外者は28万2000円)、授業料53万5800円、設備費など8万円、後援会費6万円で、81万6800円(市外者は95万7800円)です。私立の新潟工科大工学部では初年度納入金が158万円(入学金20万円、授業料138万円)なので、比較すると大きな差があります。このこともあって三条市立大学の倍率は3・7倍。一方、新潟工科大は2021年以降、定員割れに苦しんでいます。
このように私大はハンディキャップ・レースを強いられ、県内では15校の中の13校が定員割れに追い込まれているのです。次回は地域への貢献について、国公立大学や大都市圏にある有名私大と地方私大の違いなどを見ていきすが、その前に最近のキャンパスの話題を紹介します。
◆キャンパス点描(2月18日)◆
―今年度の学生表彰3団体1個人―
―青陵の評価高める実践に感謝―
<スポーツ。・社会貢献・人助け>
新潟青陵学園の名を高めるクラブ活動やボランティアの実践、さらに善行などを表彰する大学・短期大学部の「2024年度 学生表彰式」が18日、「青陵ホール」で開かれ、3団体と個人1人を表彰させてもらいました。学生たちの素晴らしい活躍・行動に拍手を送ります。受賞された皆さん、ありがとう!
表彰されたのは全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)に前年に引き続き出場した「女子バスケットボール部」、子ども食堂を定期的に運営してくれている「そらいろ子ども食堂」の運営メンバー、学生ボランティアコーディネーターとして能登半島地震の支援などに取り組むグループ「ぼらくと」のメンバー、そして2歳の迷子を弟さんと共に交番に連れて行って保護した川瀬愛莉さん(看護学部)の皆さんです。
写真=木村学長から表彰状を受けるメンバー代表
木村哲夫・大学学長から表彰状と記念品がそれぞれの代表らに手渡されると、参加者から大きな拍手が送られました。その後、木村学長、菅原陽心・短大学長から感謝の言葉を贈りました。私も「皆さんの活動・行動は青陵学園の存在を多くの方に知ってもらう面でも大変にありがたい。これからもそれぞれの目標に向かって前進してほしい」などと感謝と餞の言葉を述べさせてもらいました。
写真=表彰を受け、謝辞を述べる堀口さんら4人
<受賞者から素晴らしい挨拶>
次いで受賞者からの挨拶があり、女子バスケの代表・北原祐月さんは「私たちを育ててくれた監督や指導者の方々、応援してくださった皆さんに感謝します。後輩たちにも伝統を引き継いでもらい、インカレに出場してほしい」と語りました。そらいろ子ども食堂メンバー代表の堀口梨月奈さんは「コロナ禍で一時は大変でしたが、食材を配布するなど誰でも参加できるように工夫をし、コロナ前より参加者が多くなった。子ども食堂が地域の温かい居場所であり続けてほしい」と挨拶。
「ぼらくと」代表の松田一花さんは「私自身はそんなに大きな活動をしていませんが、メンバーそれぞれの活動が認められ、団体として受賞されたことは嬉しい。他の団体とも連携して企画・運営をしていくことで勉強になった」と語ってくれました。迷子を保護した川瀬さんは「私は看護師を目指しており、こういう形で人助けができてよかった。今後は看護師として不安や心配を抱える方に寄り添えるようにしていきたい」と将来を見据えてくれました。
写真=表彰を受けた川瀬さんを囲む看護学部のみなさん
写真=女子バスケ代表の北原さんと大谷大監督
写真=そらいろ子ども食堂の堀口さんら
写真=「ぼらくと」の松田さんら
みんな素晴らしい挨拶でした。最後は指導に当たる先生方も入って記念撮影。これからもぞれぞれの道をしっかりと歩んでいってください。
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