いま、学校は2

*ウィズ・コロナ時代 いま学校は?*

<新潟市内野小学校に見る②>

―来年1月までにタブレット配布―
―「ICT教育」への対応、迫られる市教委―

新型コロナウイルスの感染再拡大に備えながら、新潟市の教育関係者は「ICT教育」に移行する準備にも追われている。コロナ禍で全国の学校が休校に追い込まれた状況も踏まえ、国はタブレットなど情報端末と高速ネット環境の整備支援を加速させてきている。新潟市ではこの流れを捉え、来年1月中にすべての小中学生に情報端末を配布することを決めた。「全国でも取り組みが早いグループの一つ」(新潟市教育関係者)という。新潟市の大規模校の一つ、内野小学校ではどのように準備を進めていこうとしているのだろうか。

<「GIGAスクール構想」始動>

国は以前から、情報端末と高速ネット環境を学校に整備し、「ICT教育」を推進する「GIGAスクール構想」を作成していたが、コロナ禍を機にこの動きを速めようとしている。新潟市教育委員会では7月1日付けで学校支援課が広報紙「Support」を発行・配布した。「いよいよ、新潟市のGIGAスクール構想が始動します!~小学1年生から中学3年生まで、1人1台のipadと高速ネット環境を整備します」との見出しが目を引く。その広報紙を内野小学校の中村芳郎校長は示しながら、「新潟市は、子どもたちに1人1台、タブレットを前倒しで配布することを決めてくれました。来年1月までに配布されるので、私たちもそれを使いこなせるよう準備を進める必要があります」と語った。「Support」の裏ページには今年7月から来年4月までの「GIGAスクール環境整備と研修スケジュール」が書かれ、来年4月以降の活用期には「新潟市のすべての先生が、自信と安心感をもって一人一台の端末を活用した授業を実施できる状態を目指します」との目標が書き込まれていた。

<一気に整うハード>

中村校長はこの動きに、「ICT教育のハードは一気に整ってくる。それを学校でどう使いこなすか、ソフトの充実が大きな課題です。ICT教育を専門にしてきた先生は別ですが、タブレットなどのネット教育に習熟している先生は、平均して1つの学校に1人いたらいい方ぐらいですから」と現状を語る。商社マンだった中村校長の目からは「日本の学校のICTへの対応は、商社に比べて20年以上遅れている」と映る。学校の授業は、昭和の時代からそうだったが、先生が黒板に板書し、それを全児童が注目するやり方で進められてきた。ICT教育では、それが様変わりになる。「まず、教室での授業をタブレットでやれるようにすることですが、これはかなりやれると思うし、期待しています。あと、万一、また大規模な休校があった場合、家庭学習をリモートでやれるように準備をしていくことが必要で、これは結構大変だと思う」と中村校長は語る。2018年に中村校長が内野小に赴任してきた当時は、なかなか使いこなせなかった学校のコンピュータールームの活用にも力を入れてきた。「うちは40台規模のパソコンを備えたコンピュータールームがあるが、なかなか活用できていなかった。先生方に『使えないものであれば、このルームは閉鎖するしかない。閉鎖できないものであるならば、使っていきましょう』と伝え、意識改革してもらいました。プログラミングが授業になることもあり、今では、コンピュータールームを開放しており、低学年の子たちが先を争って使っています」と言う。

写真=内野小のICT教育について、パソコンを使って説明する中村芳郎校長

<前田教育長が答弁したICT教育>

新潟市では、タブレットを来年1月中にすべての小中学生に配布することを決め、新潟市教委もICT教育の推進に大きなエネルギーを注ぎ込もうとしている。先にお示しした学校支援課の広報紙「Support」には、「1人1台端末を活用した授業と これからの新潟市の教育」とのタイトルで前田秀子教育長が今年6月市議会で答弁した要旨が掲載されている。以下、紹介しよう。

<GIGAスクール構想の加速により、全ての小・中学生が、1人1台の情報端末を日常的に活用して学習を進めることは、少なからず教育の様相を変えていくものと思います。

例えば、一人一人の子どもの学習レベルや進度にあった問題に取り組めるデジタル学習ドリル等により、個別最適化された学習ができるようになります。また、デジタル思考ツールを用いて思考を深めたり、海外の学校や遠隔地の専門家とオンラインでの交流を行ったりと、授業の可能性が広がります。

しかし、学び方は変わっても、様々な人やものとかかわったり、ともに活動したり、思いやりの心を育てたりといった「教育の本質」は不易です。ICTを道具として有効に活用しながら学ぶことと、直接体験をして実感を伴って学ぶこととのバランスを上手に取りながら、本市の将来を担う子どもたちに、「たくましく 生き抜く力」の育成を目指していきます。>

<市教委が「GIGAスクール研修会」>

広報紙「Support」には、今年7月から来年4月までのGIGAスクール環境整備と教員のフォローアップ研修のスケジュールも明示されている。既に8月6日には「第1回GIGAスクール研修会」が「zoom」のオンライン研修で行われ、各校1台の端末から先生方が参加した。導入される端末は「ipad第7世代」と決まり、今年11月から来年1月初めまでに順次導入されることも決まっている。ネットワーク工事は来年1月末までに完了する見込みだ。そして、来年4月以降の「活用期」には、「新潟市のすべての先生が、自信と安心感をもって一人一台の端末を活用した授業を実施できる状態を目指します」と目標が書き込まれている。

<取り敢えずスマホ活用>

ICT教育の本格導入が学校を大きく変えることは間違いないが、一方でICTに不慣れな教員が多いことも確かだ。その上、家庭でのインターネット環境にもばらつきがある。中村校長は「家庭のインターネット環境が100%でないことは調査で分かっています。しかし、家庭でもスマホの普及率は急速に高まっています。スマホなどで家庭から学校のホームページにアクセスすれば、最近の授業のポイントが分かるように既になっています。この夏は、家庭学習にも向いている予習学習に力を入れています。今後、この1週間でやっておいてほしい学習内容をホームページでも分かりやすく把握できるようにすることで、長期休校時にも備えていけます」と語るのだった。

<青空記者の目>

今から7、8年前、東京のビックサイトで「ICT教育機器」の見本市を視察する機会があった。その当時でも大変に多彩で、こちらがびっくりするような機能を持った機器が実演展示されていた。「これは、日本でも一気にICT教育の時代がくるのではないか」と思ったが、ICT教育への切り替えは遅々として進まなかった。それが今、新型コロナ禍の下で、日本はICT教育の推進に大きく力を入れざるを得なくなっている。学校現場は、休校による授業遅れを取り戻しつつ、感染防止に最大限気を遣う「ウィズ・コロナ時代」に必死に対応しながら、その一方で、国際的に後れを取ってきた日本のICT教育を一気に前進させることも迫られている。「ウィズ・コロナ時代」への対応と、「ポスト・コロナ時代」の準備を同時に、しかも待ったなしでやるのだから、その苦労は並大抵のものではない。医療関係者の献身に多くの市民から感謝の気持ちが寄せられているが、学校現場の努力にも最大限の拍手が送られておかしくないーそんな気持ちにさせられた内野小学校訪問だった。

 

 

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