いま、学校は?1

まちづくり

*ウィズ・コロナ時代 いま、学校は?*

<新潟市内野小学校に見る①>

―8月7日まで授業、夏休みは2週間―
―秋・冬の感染拡大にも備える―

新型コロナウイルスの感染が、この夏、再び拡大してきた。「ウィズ・コロナ時代」は、学校にどんな影響を与えているのだろうか。新潟市でも大規模校の一つ、内野小学校(西区・児童数約900人)では、8月7日まで授業をやっていると聞いて、7日に内野小を訪れてみた。

写真=8月7日、新潟市の内野小学校では、翌日からの夏休みを前に最後の授業が行われていた

<6月5日に「夏休み短縮」を通知>

「これが、保護者に出した、夏休み短縮のお知らせです」、内野小学校の中村芳郎校長が一枚のペーパーを差し出した。表題は「未履修授業等の解消に向けた夏休み短縮の見通しについて(お知らせ)」とあり、日付は「令和2年6月5日」だ。ペーパーには、「長期にわたる臨時休校で生じた未履修授業等を解消するため、夏休み期間を活用できることとなりました。当校では、履修状況を踏まえ、下記の通り夏休みを短縮して学習を進める予定です。ご理解とご協力をよろしくお願いします」などと書かれている。「期間および日程(現時点における見通し)」を見ると、7月27日(月曜日)からの週は「5時間授業(給食あり)」、8月3日(月曜日)からの週は「3時間授業(給食なし)」。8月9日から23日までが夏休みで、24日(月曜日)は「2時間授業(給食なし)」、25日からは「5時間授業(給食あり)」となっている。

写真=内野小学校の中村芳郎校長が6月5日に保護者に配布した資料

<学習は2週間ほどの遅れ>

内野小学校では、新潟市の学校が再開された6月1日からわずか5日目で、夏休みを2週間に短縮する方針を打ち出していた。夏休みの期間については、各校の裁量に任されているので、1カ月以上休みを取る学校もあり、各校でばらばらだ。2週間しか取らない内野小学校は、新潟市内で最も夏休みが短い学校だ。これまでの休校期間の状況をみると、新潟市の小学校は「令和2年3月2日(月曜日)~4月5日(日曜日)」と「4月23日(木曜日)~5月31日(日曜日)」の2回だ。内野小では、最初の休校期間のものは「4月17日(金曜日)までに新学年で履修済み」であり、2回目の休校期間の分も、その期間の分散登校で「国語、算数、理科、社会を中心に、30時間を回復している。

<予習型の学習に力点>

中村校長は「首都圏など授業の遅れが大変なところもあるが、新潟市はそうでもない。5月までで、うちは2週間ほどの遅れとなっています」と説明する。それでは、夏休みを大幅に短縮した狙いはどこにあるのか、伺った。「約5週間ある夏休みを短縮しても良い、と市教委から方針が出た。給食も7月と8月の終わりには提供できるという。それなら、うちは夏休みを短くして、早く遅れを取り戻しておきたいと思いました。あまり想像したくないことですが、秋・冬にコロナが蔓延した場合、相当な休校を覚悟しなければなりません。それなら、今のうちに『稼いでおこう』との気持ちがあります。それと、学校では通常、復習型の学習をやっているのですが、復習型は休校時の対応が難しい。うちは夏休みを短くした期間、予習型の学習を徹底してやっています」と中村校長は言う。「こういう勉強をしておいて、学校の授業で確認をしよう」という予習型の方が、「子どもたち自らが主体的に学ぶ気持ちを引き出しやすく、休校時での対応がしやすい」と中村校長らは考えているからだ。

<「民間人校長」の行動力>

中村校長は、新潟市が2008年度から始めた「公募校長制度」の7代目だ。公募は主に民間人が対象だが、中には市職員から手を挙げて選ばれた方もいる。中村校長は上越市の出身で、商社に就職。5年間のドイツ駐在の後、40代前半で帰国した後、2011年に3・11大震災を東京で体験した。「仕事をしていたビルが大揺れに揺れ、死ぬかと思いました。それを契機に、ふるさとを見直す気持ちが生まれ、たまたま新潟市のホームページで『公募校長』の制度を知りました。『子どもたちのために、何か役に立ちたい』との気持ちも芽生え、やってみることにしました」と言う。

2013年、校長として最初の赴任校は児童数300人ほどの竹尾小(東区)。3年後に上山小(中央区)の校長となり、内野小が3校目で、2018年4月に赴任した。「民間出身のせいか、動きが速く、物事を機能的に考える。地域とのつながりづくりにも熱心」との定評がある。

<入学式は5クラスごとに開催>

その中村校長にしても、今回の新型コロナへの対応には翻弄させられた。新型コロナで休校が決まった2月28日(金曜日)は、一日で先生方に宿題をつくってもらい、子どもたちに渡すことで精いっぱいだった。3月の卒業式は、参加者を卒業する6年生約130人と、保護者は子ども1人につき2人までに絞らざるを得なかった。来賓は呼べず、400人規模で開催するのがやっとだった。4月の入学式。5クラスある内野小では、全員を集めるリスクを回避して、1クラスずつ5回に分けて式を行った。「簡略化した式を1クラス20分ほどで5回転。その間に記念写真を撮るので、結構忙しかった」と中村校長は振り返る。新潟市教委の「コロナ禍の中でも、やるべき勉強をできるだけきちんとやろう」との方針の下、4月23日からの休校期間には午前Aグループ、午後Bグループと分けて分散登校を実施。学業の遅れを最低限にとどめる工夫を各校で行った。「まさに、疾風怒涛の半年間でした」と、新潟市の教育関係者は振り返る。さらにICT教育への転換に追われる日々が続くことになる。

<青空記者の目>

内野小学校と中村芳郎校長を通して、「ウィズ・コロナ時代」の学校について、考えてみたい。教育界は、とかく「横並びを好む」と言われるが、今回の新潟市教育委員会の選択はそうでない。夏休みの期間も各校の自主性に任され、長い学校で36日。内野小より倍以上長い学校も結構あるようだ。卒業式や入学式のやり方もさまざまだった。さらに、コロナを機に新潟市の学校は大きな転機を迎えようとしている。ICT教育の導入だ。国では「GIGAスクール構想」に基づき、小学1年生から中学3年生まで1人1台の端末(ipad)を活用した授業が本格的に始めようとしている。新潟市では、来年1月までにすべての子どもたちに端末の配布を終えることにしている。これは「新潟市は、全国で最も早いグループの一つ」(市教育関係者)という。次回は、この準備を内野小で見てみよう。

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