実家の茶の間 新たな出発9

地域の茶の間

*実家の茶の間 新たな出発(9)*

<コロナ感染拡大 再度の活動休止①>

「様子を見ながら、柔軟に対応ね」―

―「ピンチをチャンスに」助け合いは継続―

<18日から9月上旬まで「お休み」>

新型コロナウイルス感染拡大の第5波が首都圏などから地方へ急速に広がってきた。新潟県も8月に入り、連日のように「過去最多」の感染者確認が続いている。この様子をじっと見ていた実家の茶の間運営委員会のメンバーは先週末、大きな決断を下した。「いったん活動をお休みにしましょう。期間は取りあえず9月上旬までにして、後は様子を見ながら、柔軟に対応しましょう」―代表の河田珪子さんは、お当番さんたちに相談しながら、そう方向を決めた。せっかくお昼を7月に復活させたばかりだったが、大切な参加者と「茶の間」という場所を守るための決断だった。河田さんから「いったんはお休み」の方向を相談されたお当番さんたちは、多くがホッとした感じだったという。みんな、猛威を振るうデルタ株から実家の茶の間をどう守るか、真剣に考えていたからだ。

写真=16日「実家の茶の間・紫竹」。昼過ぎには18日からの「お休み」を知らせる紙が「案内板」に貼り出された

<運営日はお当番さんが常駐>

茶の間 の運営日の16日(月)、朝のミーティングで河田さんはお当番さんたちと休止期間の対応について話し合った。「運営日の月曜と水曜には、お当番さんはいつも通り茶の間に詰めることにしましょう。18日からのお休みを知らずにいらっしゃる方がいるかもしれないし、コロナの感染拡大で不安に思われる方の相談にも乗っていきたいから」「知らずにお出でになった方にはすぐお帰りいただくんじゃなくて、お茶を飲んで休んでいっていただきましょう。但し、時間はまず30分程度にしましょうね」―などの方向が決まっていった。この日いらっしゃる方には「18日からの休止」をお知らせしつつ、運営日にはお当番さんが詰めているので「心配事は何なりと相談を」と伝えることにした。その後、常連さんたちに電話で「18日からいったんお休み」の連絡を取っていたお当番さんの一人、長島美智子さんは「電話をすると、みんなすぐに了解してくれました。参加者の方も茶の間のことを心配してくれているんですね」と明るく語った。実家の茶の間のパートナーである新潟市役所にも連絡をし、お昼には担当課長らが顔を見せて細かな打ち合わせも行った。河田さんら運営チームの動きは、いつも通り素早い。

写真=16日の実家の茶の間の様子。参加者にとって、かけがえのない大切な場だ

<「お 互いさま・新潟」再起動のきっかけへ>

それだけでなく、河田チームは「ピンチをチャンスに変える」手だても話し合っていた。「感染拡大で色々と心配な方も増えるでしょうから、簡単な困りごとは助け合ったらどうでしょう」「例えば一人暮らしで買い物に困る方には、助け合いで買ってきて上げたらどうかしら。家に入らずとも、玄関に置いて差し上げるだけでも助かる方はいらっしゃると思う」―などと具体的な方向が固まった。昨年、茶の間の活動を休止した際は、利用回数チケットはいったん回収をし、全部払い戻しをして精算した。しかし、今回はその方式は取らないことにした。6枚1500円の利用回数チケットは、有償の助け合いにワンコイン替わりに使われることも多いからだ。「買い物代はこちらが立て替えればいいんだし、チケットはワンコイン替わりに積極的に使っていただきましょう」と、河田さんたちの意見は一致した。茶の間での助け合いを継続することは、コロナ禍で昨年から活動が休止している有償の助け合い「お互いさま・新潟」を再起動させるきっかけにもなりうるのではないだろうか。

<「お互いさま」は中止ではなく、休止>

7月からお昼を復活するなど、実家の茶の間はコロナ禍の前の姿を取り戻しつつあったが、「お互いさま・新潟」は再開の目途が立っていなかった。「コロナ禍で国の財政が厳しくなると、お互いさま・新潟のような助け合いが益々重要になるのに…」と河田さんたちは気をもんでいた。国が掲げる「地域共生社会」を絵に描いた餅にしないためにも、地域での助け合いは不可欠なのだ。このことがずっと気になっていた河田さんは、先月開かれた新潟市の「戦略会議」の席上、こう質問した。「新潟市として、お互いさま・新潟は中止なのでしょうか、休止なのでしょうか?」と。市の担当課長の答えは明快だった。「休止です」。「実家の茶の間・紫竹」をはじめ新潟市の地域包括ケア推進モデルハウスの方向性などを話し合う戦略会議の場で、「お互いさま・新潟」の必要性が再確認された。「中止と言われたら、どうしよう」と案じていた河田さんたちは、このやり取りで今後の再起動への手応えをつかんでいた。

<困りごとを丁寧に聞くチャンス>

「休止なら、休止時の対応や再開への道筋を考えていこう」ー改めて思いを巡らしていた河田さんたちは、今回の「茶の間いったん休止」の状況の中、茶の間で培った信頼感を基にした「助け合い」を継続していくことを決めた。「助け合い」の重要性を多くの方が確認することで、近隣の助け合い「お互いさま・新潟」の活動の大切さを知ってもらうきっかけにもなると考えているのではないか。まさに「ピンチをチャンスに変える」発想だ。運営日にお当番さんが詰めていれば、「さまざまな困りごと相談を丁寧に聞くこともできるし、一部の困りごとへの対応も可能になるかもしれない」―そう河田さんたちは考えている。これまでも実家の茶の間にはさまざまな相談が寄せられていたし、(前回のブログで紹介したように)サポーターの武田實さんたちが茶の間の参加者らの困りごとに実際に対応してくれている実績もある。

「今回はお休みの期間も含めて、コロナの感染状況を見ながら柔軟に対応していこうと思います。実家の茶の間のチームなら、それができると思うの」―そう言って、河田さんはお当番さんたちと笑顔でうなずき合っていた。

<青空記者の目>

 8月に入り、新型コロナの感染拡大が新潟県内でも顕著になってきた。お盆前の12日には104人と初めて3桁になり、13日には129人と過去最多を更新した。新潟市も同日、県と同じく過去最多の68人の感染が確認された。この数字は2週間ほど前の人の動きを反映しているので、お盆帰省などで人流が増えていけば、さらなる感染拡大が危惧される。こんな状況を踏まえて、実家の茶の間運営委員会のメンバーは「いったん休止」との判断を下した。的確だと思う。

 それも、ただ「閉める」だけではなく、運営日には代表の河田珪子さんをはじめ、お当番さんたちが茶の間に詰め、心配事を抱えるお年寄りたちの相談に乗ることも決めた。さらに、「不安が広がるこの時こそ」茶の間で培った信頼感を基にした助け合いを継続し、懸案だった有償の助け合い「お互いさま・新潟」の再起動にも結び付けようとしているように思える。

写真(左)=16日の実家の茶の間では、市の保健師さんらが「健康相談」を開いていた (右)=午後には市の保健担当者からコロナや熱中症のことについて注意事項が伝達された。茶の間は参加者にとって、さまざまな情報に触れることができる貴重な場所でもある

 新潟市の地域包括ケア推進のモデルハウス第1号である「実家の茶の間・紫竹」は、国が進めようとしている「地域共生社会」のモデルでもある。地域には主な役割として「介護予防」と「生活支援」が求められるが、河田さんたちは「生活支援」について「歩いて15分以内の助け合いを新潟市全域で構築しよう」と取り組みを進めてきた。それが「助け合い お互いさま・新潟」だった。「助け合いの学校」を市内8区で開催して人材を育成すると共に、実家の茶の間が拠点となって電話での困りごと相談も受け付けていた。

この取り組みを大きく広げようとしていた時、コロナ禍が襲い、「お互いさま・新潟」は休止せざるを得なかった。この取り組みの再開は、「地域包括ケアシステムを構築する上で不可欠」と河田さんたちは考えている。コロナ感染が新潟でも勢いを増し、茶の間が「お休み中」でも、河田さんたちは茶の間の利用回数チケットも活用した「助け合い」を継続していくことにした。それは「お互いさま・新潟」を再起動させるきっかけにもなるだろう。「強い意志」と「柔軟な対応」を併せ持つ河田チームだからこその動きではないだろうか。「お休み中」の看板を掲げながら、「実家の茶の間・紫竹」の活動が続く。

 

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