いま内野小学校は?5

内野小学校

*いま内野小学校は?(5)*

<来年の開校150周年へ 着実な歩み>

―大型遊具と50年目の「お別れ会」―

―校庭を芝生化 桜植樹への準備も進む―

<「150周年に桜を植えよう」>

新潟市の内野小学校は来年度で開校150周年を迎える。学校はもちろん、地域挙げて大きな節目を盛り上げようと、5年ほど前から構想を練っていた。機運が盛り上がってきた2018年度、商社マン出身の民間人校長、中村芳郎さんが内野小に赴任して、運動の輪は大きく広がり、構想は具体的になっていった。当時のPTA会長、徳山啓輝さんは中村校長のパワーに驚いた。「とにかく行動が速い。地域との関係もみるみる強化されました。開校150周年を前に良い人が校長にやってきてくれた、とみんな喜びました」と徳山さんは振り返る。中村校長が赴任した初年度に、150周年の記念事業の大枠が決まった。「市内で一番広い学校敷地を整備し、内野小のシンボルである桜の木を100本植樹しよう」との計画だった。

写真=内野小学校の校庭で、先人たちが植えた桜の木の前に立つ(左から)徳山啓輝さん、佐藤正人さん、中村芳郎校長

内野小は広い校庭に以前から桜が植えられ、「さくら学校」の愛称があった。桜の開花時期には、地域の方も学校のグラウンドで花見をするのが習慣になっているほどだ。徳山さんらPTA役員は、中村校長と一緒に地域や同窓会を回り、桜の植樹など150周年事業への理解を得ていった。これに真っ先に賛同したのが地域の「愛桜会」だった。市会議員の佐藤正人さんが会長を務める愛桜会では早速、桜を寄付してくれる団体と協議し、話をまとめてきた。このことで桜の植樹は途中から計画が膨らみ、「開校150周年の2022年度から、3、4年掛かってもいいから150本植えよう」とパワーアップした。

<いくつもの推進エンジンが登場>

計画の規模拡大に合わせるように、内野地域では態勢づくりも強化されていった。PTA本体のほかに、PTA会長だった徳山さんが代表となって「うちの地域特別チーム」が結成された。さらに徳山PTA会長時代に役員を務めた綱本麻利子さんらが地域づくりグループ「Smile Story」を組織、今年6月には一般社団法人へと移行した。「スマイル…」の活動についてはこのブログでも紹介したが、学校事業に協力すると共に海岸清掃や「さくら食堂」などの活動に精力的に取り組んでいる。開校150周年事業を推進するエンジンがいくつもあるのが内野の特長だ。

写真=「スマイル…」が呼び掛けた海岸清掃の様子。いつも「さくら食堂」の旗が見守っている

<思い出いっぱい、大型滑り台>

内野小では今年、開校150周年に向けて取り組むと共に、これまで半世紀にわたって子どもたちが親しんできた大型遊具に別れを告げるセレモニーが待っていた。その遊具は「シルバータワー」と呼ばれる大型滑り台で、開校100周年の記念に地域・PTAから寄贈されたものだった。校舎の建つ高台からグラウンドまでを2回に分けて滑り降りるもので、長年、内野小の名物ともなっていた。しかし、半世紀が過ぎて老朽化が進み、危険で使えなくなっていた。

写真(左)=内野小の校庭高台に設置されているシルバータワーと、滑り台にたどり着くまでのアプローチ(右)。これが子どもたちを怖がらせ、また、人気を呼んだ

10月12日、セレモニーの行われる日はあいにくの雨模様で、式典は屋内の体育館で行われた。壇上のスクリーンにシルバータワーの写真が映し出され、子どもたちやPTA、同窓会、地域の代表らが別れを惜しんだ。中村校長が「きょうはシルバータワーにお別れをする日です。『さようなら』は、日本語ならではの優しさと潔さがある表現です。まるで私たちが大事にしているサクラのようですね」などと挨拶し、児童代表が「シルバータワーはとても大きくて、低学年の時は滑るところまで行く前に下に落ちてしまわないかと心配でした。でも、滑るととっても気持ちが良かったし、いつも行列ができているのも楽しかったです。いつまでもシルバータワーのことを覚えていてほしいです」と別れを惜しんだ。

写真(左)=シルバータワーのお別れ会に体育館に集まった子どもたちと、壇上のスクリーンに映し出されたシルバータワー

<「新たな名物を育てよう」>

内野小では、「シルバータワーの替わりに、グラウンドに新たな名物を育てよう」との気持ちを込めて、一つの取り組みが始まっていた。それはグラウンドの芝生化だ。7月に子どもたちと植えた芝は、夏芝から冬芝へと変わり、青々と育ってきた。シルバータワーが撤去される今月下旬には、子どもたちが芝生の上で遊ぶことができそうな成長ぶりだ。中村校長は「お別れがあれば、出会いがあります。皆さんが植えた芝生が育ってきて、新しい内野小の名物になってくれるでしょう」とセレモニーでも子どもたちに語り掛けていた。

写真=青々と育った芝生の上に立つ中村校長。内野小の新たな名物に育てようとしている

校庭の芝生化は初期費用や維持経費などでなかなか整備が進まないが、内野小では苗から育てることで初期費用を抑えた。「芝生は、植えれば芝刈りをずーっと続けなければなりません。これには地域の方の協力が必要ですが、うちは心配ありません。ここの地域パワーはすごいですから」と自信の笑みを浮かべて語っていた。

<「桜150本はいけますよ」>

お別れセレモニーの2日後、10月14日の内野小のグラウンドには中村校長をはじめ、佐藤さん、徳山さんの姿があった。この日は、学校敷地で伐採した竹などを焼却場に運ぶため、軽トラックを調達して作業する日だった。その合間に桜植樹の打ち合わせも進む。桜の寄贈は既に昨年度、30本が寄贈され、植樹を終えた。「今年度はもう45本いただけることが決まりました。これは11月半ばにでも植樹しましょう」と佐藤さん。徳山さんが「もう1、2年掛ければ150本になりますかね」と尋ねる。「おそらく大丈夫でしょう。うちは学校敷地も広いし、植樹の場所も決めてあるなど、しっかり対応していますから」と佐藤さんが答える。来春には満開の桜と芝生の競演が楽しめそうで、その先には150本を目標に新たな桜植樹が待っている。

写真=校地整備のため伐採した竹などの樹木の前に立つ(左から)中村校長、佐藤さん、徳山さん

<青空記者の目>

開校150周年に向けての内野小の意気込みとパワーには目を見張らされるものがある。地域のシンボルである学校の周年事業が持つ求心力は、想像以上に大きいものがあるのだろうか。シルバータワーのお別れセレモニーに参加していた鈴木寿行さんは、この日がちょうど還暦の誕生日だった。「私が小学校4年生か5年生の時に、シルバータワーができたと思います。あの滑り台の一番上から見た内野の風景は今も忘れられません。私の原風景の一つでしょうか」と鈴木さんは言う。

鈴木さんは長年、信濃川右岸で「萬代橋サンセットカフェ」を運営し、新潟の水辺と夕日の素晴らしさを多くの人に伝えてきた。今はキッチンカーなどを活用して、「スマイル…」のメンバーと共に「さくら食堂」や海岸清掃などの活動に加わる。「子どもたちにいい思い出を伝えていきたいですね」と鈴木さんは言う。来年の150周年記念事業は、子どもたちにも内野の素晴らしさを伝えるものになるだろう。

写真=「スマイル…」のメンバーと旧高柳町(柏崎市)荻ノ島の棚田で稲刈り体験をする鈴木寿行さん(左端)。子どもたちのため、内野と荻ノ島に新たな絆を結ぼうとしている=9月下旬

 

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