いま学校は?13

新潟の小学校

*ウィズ・コロナ時代 いま学校は?*

<新潟市の小学校に見る④新潟小>

―「ESD」の研究指定校に―

―地域・国際・人権・防災に向き合うー

<新学習指導要領が全面実施>

いま、全国の学校は大きな変革期にある。今年度から新学習要領が全面実施となり、その対応に向けて新たな態勢をつくっていたところに、新型コロナウイルスの感染が広がった。「2正面作戦以上の対応が迫られている」と教育関係者の多くが語る。そんな中、新潟市のまちなかにある新潟小学校(中央区)は、これまでの教育目標などを全面的に改めた「新小プラン2020」を作成。今年度から新しいスタートを切っていた。

 

 

写真=新潟小の「新小プラン2020」の説明図
目玉はESD(持続可能な開発目標のための教育)の推進だ。ESDは、SDGs(持続可能な開発を目標とする17のゴール)に対応し、ユネスコが世界に普及させている教育方法で、「SDGsを主体的に学び、行動を起こせる人間を育てる教育活動」と規定される。重視するのは6つの視点で①多様性②相互性③有限性④公平性⑤連携性⑥責任性―が挙げられ、「人間教育そのもの」と評価されている。

新潟小では、「新小プラン2020」の3つの柱の1つにESDを据え、教科横断的にESDを取り入れていくことにした。既に国立教育政策研究所の研究指定を受け、11月には1年次の研究発表会を開く。新潟小はESDの具体的テーマとして「地域」「国際」「人権」「防災」の4つに取り組もうとしている。まちなかにある新潟小ではこれまで新潟まつりに参画すると共に、地域教育プログラムによる「大好き新潟」を実施してきた。新潟の一番街である古町や本町の商店街組合とも連携、「古町スイーツ」を共同でつくり販売するなどの実績がある。また、国際面では外国籍児童の割合が高く、人権面では北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの出身校で、毎年「めぐみさん集会」を開いている。大河・信濃川にも近く海抜0メートルに位置していることや通学範囲が広いことから防災面にも気を配らなければならない特性がある。4つのテーマはそんな特性を踏まえて選定された。

<4年生が初の「防災合宿」>

「新しいスタート」に向けて準備を進めていた時にコロナ禍が襲ったわけだが、吉田校長はじめ教職員は新たな方向に向けて歩み始めている。

7月3、4日には、100人近い4年生が初めての「防災合宿」に取り組んだ。防災士の方の指導を受けながら学校内に避難所を設営した。クラスごとに、お年寄りや障がい者、病気の方、妊婦さん、子どもたちなど、それぞれに合った間取りを考え、段ボールや避難所グッズを使って生活スペースをつくった。さらに毛布などで担架をつくり担架体験。「服で担架をつくっても破けなかった」「ホント、びっくり!」と子どもたちは口々に語った。非常食をつくって、みんなで食べ、簡易トイレづくりにも取り組んだ。「避難所生活で必要な物はTKB(トイレ、キッチン、ベッド)であることを学びました」と男子児童は感想を記した。

吉田校長は「うちの学校は海抜0メートルなのに、大地震が起きた時の津波想定は最大3メートル。自宅までの距離が10キロ以上ある子どももいます。決して災害に強い学校とは言えません。子どもたちには災害から自らを守る術を学んでほしいと考え、防災合宿を新小プランに位置づけました」と言う。これまで新潟小では、4年生と5年生は胎内市で自然教室(合宿)をやってきたが、「できるだけ多様な体験をさせたい」(吉田校長)と今年から4年生を防災合宿切り替え、まずは大きな手ごたえをつかんだ。

<豪パースの日本人学校と交流>

国際理解を進める取り組みも始まっている。オーストラリアの西端に位置するパースの日本人学校(児童数33人)とオンラインでの交流会を2回開催した。その日本人学校に新潟県内の小学校勤務経験者が勤務している縁を活かしたものだ。日本人学校は現地のシティビーチ小学校内に設置され、子どもたちは日々異文化に接しているという。交流に取り組んだ新潟小の「たんぽぽ運営委員会」の23人は、約6千キロ離れたパースの子どもたちがテレビ画面に映ると、大きな歓声を上げた。パースにいる子どもたちは手を振ってくれて、距離の遠さを感じなかったという。交流会は自己紹介から緊張をほぐすゲーム、質問タイムと続いた。新潟小の子どもたちからは「ゲームで盛り上がったけど、直接会って交流もしてみたい」「これから先の人生で役に立つ経験ができてよかった」などの感想が聞かれた。いま、3回目の交流会に向けて内容を「考え中」という。
コロナの影響はやはり大きい。新潟小の子どもたちが毎年、大きな役割を果たしてきた新潟まつりは中止になり、毎年開催している「めぐみさん集会」は、めぐみさんと同級生のバイオリニストが新潟で演奏することができなくなった。

 

 

写真=新潟小の廊下に貼ってある「横田めぐみさんの帰国を願う集会」の記録

<半世紀ぶり教育目標を改定>
コロナ禍に苦しみながらも、吉田校長らは新小プラン2020の着実な推進に力を入れている。3本柱のうち、ESD以外の2本の柱「自立した学び・個別最適化された学びの推進」「多様な個性を認め合う活動の推進」もこれからの時代に子どもたちに必要なものと思うからだ。新潟小は、新潟市でも一番のまちなかにあり、歴史も古い。それだけに教育目標などを全面的改めるのは大きな取り組みだった。新潟小のこれまでの教育目標は「明るく伸びる元気な子ども」だった。新潟が大地震に見舞われた1964(昭和39)年から半世紀以上も続いてきた教育目標を変えることは、吉田校長にとっても大きな決断だった。そのことについて吉田校長は、これまでの教育目標を定めた当時の遠藤稔校長先生に宛てる手紙の形式で、年度替わりの学校だより「新潟」にこう綴っている。

「50年以上続いてきた教育目標を見直すことは苦渋の決断です。しかし、予測困難な未来社会を生き抜くためには『挑む力』や『認め合う心』が一層重要になるという考えから、教育目標を改めました。新教育目標は『たくましく 美しく』です。これは(遠藤校長が名付けた)新潟小のシンボルである、たんぽぽの姿を表したものでもあります」

<新しい社会に対応>

なぜ今年度、学校の教育目標を「たくましく 美しく」に変えたのか、吉田校長に聞いてみた。吉田校長は第一に「本年度から新学習要領が全面実施となる」ことを挙げた。「新学習要領を受けてカリキュラムを抜本的に見直しました。新たなカリキュラムを『新小プラン2020』と名付け、昨年度末から徹底を図っています」と吉田校長は、プランの位置付けについて改めて説明する。新潟小では新しい教育目標の下で育む資質・能力として「挑む力」「やり抜く力」「認め合う心」「支え合う心」の4点を定めた。新小プランのねらいは新しい社会の変化への対応だ。国は「超スマート社会」を目指しており、テクノロジーの進化は日本社会のあり方を変えるだけでなく、ICT教育のように子どもたちの学びも変えようとしている。国際化は同質性の高い日本社会に変革を迫り、多様な価値を認め合う時代を招くだろう。

新潟小ではそんな流れを踏まえ、新しい教育目標やプランを作成し、実践に入っている。「新潟小という長い伝統ある学校をお預かりしているので、プレッシャーもあります。一方で、うちは地域からの協力がすごい。地域の力をひしひしと感じながら、新小プラン2020にしっかりと取り組んでいきます」と吉田校長は語るのだった。

<青空記者の目>

新学習指導要領が全面実施となる年度に新型コロナが学校を襲い、教育界は大嵐の中にあると言ってよいだろう。ICT教育を推進する「GIGAスクール」は一気に加速し、新潟市ではコミュニティ・スクールも2022年度から全面導入される。そんな大変な状況の中、私が訪れた新潟市の3小学校はどこも元気に頑張っているように見えた。

コロナは大変な災厄であるが、これまで動かなかったものを動かす好機にもなる。新潟小ではESDの推進に際し、新潟小らしいテーマを決めて積極的に動き出していた。新潟小には「がにがにの精神」と「ともにの精神」が受け継がれている。「がにがに」は「すべての子ども すべての先生」「すべての先生 すべての子ども」であり、「ともに」は「学校・地域と共に」「保護者同士も友に」のことだと言う。その精神を伸ばし、「地域=学びのステージ 地域が学校」を築いてほしい。

 

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