いま学校は?12

新潟の小学校

*ウィズ・コロナ時代 いま学校は?*

<新潟市の小学校に見る③上所小>

―教科担任制の良さ 最大限活かす―

―「多くの目で、子どもたち見守る」―

新型コロナウイルスの感染が学校現場の負担を増す前から、全国の小学校などで「教職員の働き方改革」が大きな課題になっていた。そんな中で、小学校高学年では「学級担任制」から「教科担任制」に移行する動きが目立ってきた。「高度な内容を扱う高学年は、その教科を専門とする教員による指導が有効」との側面や、「担当教科数を減らすことで教員の負担軽減につながる」などの理由から教科担任制を採用する小学校が多いようだ。一方、新潟市の上所小学校(中央区)は、全学年を対象とする教科担任制を昨年度から導入しているという。上所小を訪ね、その狙いや課題を聞いた。

<「ソフトな教科担任制>

上所小の大井隆校長は、新潟市教委の学校支援課長時代から気になっていたことがあった。全国の小学校で「学級崩壊」や「学級の荒れ」が問題になっているのに対し、中学校ではこれらの現象がほとんど見られないことだ。「中学校では個別生徒の指導事案はあっても、学級の荒れはほとんど起こらない。なぜだろうか?」と自問自答しているうち、大井さんは「小学校の学級担任制に問題の一端があるのでは」と考えるようになった。「発達障害などが増え、学級運営は難しさを増しています。先生と子どもたちの相性の問題もある。一人の先生が学級すべてに責任を持つやり方が本当に良いのか。学級担任制にこだわる必要はないのでは」と大井さんは考えるようになった。

2018年4月、大井さんは上所小校長として学校現場に復帰した。働き方改革も進められていたが、教職員の繁忙は解消されてはいない。働き方改革の側面も踏まえると、「小学校でも教科担任制を取り入れる方が良いのでは」との考えは、確信にまで高まっていった。「先生の数は限られているので中学校と同じ教科担任制はできないが、ソフトな教科担任制ならやれる。1年間、ずっと同じ先生が子どもを見るよりも、複数の目で子どもたちと向き合った方が良い」と大井校長は結論を出し、「目的は『安定した学級づくり』なのだから、すべての学年でやるべきだ」と具体方向を決めた。2018年11月から学校の主任会やPTAの代表らに提案。2019年度からの導入に向け、全校挙げて準備を進めた。

<教科担任制のメリット>

大井校長は教科担任制のメリットについて、次のように整理した。①複数の教師で子どもに関わり、情報を共有し、指導・支援することで学級の荒れを防ぎ、落ち着いた学級づくりの実現を図れる②子どもは、多くの先生から関わってもらうことで、「多くの先生から見守られている」ことが実感でき、安定した学校生活を送れる③先生の担当教科数を減らすことで、担当する教科の教材研究・準備の充実が図れる④学級経営のすべてに責任を持つという心理的負担や働く時間の軽減が図れる―などであった。

では、「ソフトな教科担任制」とはどのようなものか。6年生を例にした上所小の資料を基に見てみよう。

 

【資料1】のように、基本は算数と国語の授業交換になる。6年1組担任のA先生は1週間で2組の算数5時間を担当し、替わりに2組担任のB先生は1組の国語3時間に加え家庭1・5時間と総合0・5時間を受け持つ。「さらに学年全体を『チーム学年』として見ることができるように工夫しました」と大井校長。A先生は、3組の家庭と音楽各1・5時間を担当し、替わりに3組担任のC先生が1組の社会3時間を受け持つ。A先生は、4組の合同体育を受け持つため、6年生すべてと関わることができる。【資料2】は6年3組の1週間の時間割で、黄色が担任以外の先生が担当する授業だ。その結果、授業の担当状況は【資料3】のような割合となっている。「ソフトな教科担任制」とは言え、子どもたちにとっては大きな変化だろう。

<学年内の情報共有を重視>
大井校長が「ソフトな教科担任制」に移行するに当たって、大きなポイントとしたのが学年内の情報共有だった。「子どもの授業での様子や授業の進捗状況などで十分な情報交換がなされ、情報が共有されないと、子どもへの対応が不十分になったり、複数の先生が関わる教科担任制の良さが発揮されなかったりします」と大井校長。上所小では、その情報共有のため、毎週水曜日は給食の後の5限をやめ午後を放課とした。午後1時半から退勤時まで、会議などは入れずに【資料4】のように「学年・学級の時間」をたっぷりと確保した。

<アンケートで高い評価>

昨年4月から「ソフトな教科担任制」を実施した後、上所小では取り組みへの評価を聞くアンケートを行った。7月には子ども・保護者・教職員に、12月には保護者と教職員を対象とした。子どもたち(663人)は「とても良い」が62%超、「まあ良い」は29%超と、90%以上の子どもが肯定的に答える結果となった。代表的な反応として「得意教科の先生が教えてくれるので、分かりやすい」「いろんな先生に教えてもらうので、どの先生とも話しやすくなった」などがあり、否定的な反応としては「先生によって色々な教え方があって慣れないから」などがあったという。保護者(665人)でも肯定的な評価が2回とも90%を超えた。

 

写真=上所小学校の算数の授業。担任の授業か、担任以外かは説明を聞かないと分からない

担任の先生24人の評価は「賛同する」37%、「まあ賛同する」63%と、全員が肯定的に捉える結果となった。個別の設問では、「子どもたちの様子が以前より分かるようになったか」「学年内での打ち合わせで、子どもの話題が増えたか」で肯定的な答えが多かった。子どもと向かい合う時間が増えていることの表れといえる。また、「担当する教科が減り、以前より楽になった」との働き方改革面も高評価であり、「同じ授業を複数回やることで、授業を改善しながらできた」との授業改善での手応えも出ている。大井校長は、「もちろん、はじめは変わることに抵抗がある先生はいましたし、『子どもたちの個別指導の時間がとりにくい』などの課題も出ました。それでも『賛同する』との答えが今は3分の2ほどになり、受け入れられている」と語る。2年目に入り、「落ち着きのない学級が少なくなった」「不登校児童数が減少した」など、良い現象が見られる。

<広がる教科担任制>

上所小の実践を受けて新潟市の小学校、特に大規模校では教科担任制を取り入れるところが増えている。大井校長は「教科担任制は、安定した学校づくりに効果が大きい。大規模校では半分ぐらいが取り掛かっているし、比較的小さな学校でもやれると思う」と言い、「これまで、とかく学校は『決められたことしかできない』と言われてきました。でも、少なくとも新潟市では、いろんなことができるようになっています」と笑みを広げるのだった。

<青空記者の目>

英語が小学校高学年の授業に取り入れられたことなどを契機に、文科省は「高学年での教科担任制に力を入れ出している」と聞いていたが、新潟市の上所小学校の実践はその域を超えていると感じた。「一人の先生がクラスの授業をすべてやり、そのクラスのことをすべて抱え込む」学級担任制に比べて、「複数のクラスで授業をして、複数のクラスの子どもたちと関わることができる」教科担任制のメリットは大きいように思う。また、自らの少年時代を振り返っても、子どもとは言え先生との相性の良し悪しはあった。合わない先生と、学校で毎日顔を合わせ続けるのは子どもにとってもかなり辛いことだ。複数の先生と向かい合える教科担任制は、子どもの心の面にも良い効果があるのではないか。

これまで、新潟市の小学校をいくつか見てきて、学校の自主裁量性が大きくなっていることに改めて気がついた。「画一的で、決められたことしかやらない」との評価は、もはや当てはまらない。いつからそうなってきたのか、即断はできないが、「学校を2学期制にするか、3学期制のままにするか、学校が決める」ことにした辺りが分岐点だったかもしれない。これからも地域特性や伝統を踏まえながら、子どもたちのため、地域のため、教職員のため、さらなる改革を進めてほしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました