文化が明日を拓く15

まちづくり

*文化が明日を拓く?!(15)*

<ウィズコロナ時代 りゅーとぴあの今②>

―感染の第3波 消える年末の風物詩―

―「客離れ 呼び戻し策を模索」―

<この秋は賑わいが復活>

写真=冬の雰囲気を纏い始めた「りゅーとぴあ」

新型コロナウイルスの感染が拡大した今春から初夏にかけて、ほとんどの催しを中止せざるを得なかった新潟市の「りゅーとぴあ」では、この秋、ようやく賑わいを取り戻しつつあった。11月1日に開催された東京交響楽団の「2020霜月」のステージは約700人の聴衆が「ダッタン人の踊り」(ボロディン)や「悲愴」(チャイコフスキー)などのロシア音楽を楽しんだ。これは、コロナ禍で中止された「東響新潟定期演奏会」に代って開催している一連の「新潟特別演奏会」として開催されたもので、生演奏に飢えていた観客の熱気が感じられた。「コロナ禍が広がった後では、りゅーとぴあで一番の入りだったでしょうか」と仁多見浩支配人は言うが、りゅーとぴあの苦戦は続いている。

「国のガイドラインでは、りゅうとぴあも満席使用が認められましたが、うちは入場を定員の2分の1のままで制限しています。東響の2020霜月のステージも含め、既に2分の1の枠で前売りをしていたこともあり、追加販売はしませんでした。追加販売すると前売りで席を取っていただいた知り合いのお客様の間に知らない方が入ることになるし、下手に満杯にして、またコロナが広がって払い戻しするようなリスクは取りたくなかった」と仁多見支配人。

写真=りゅーとぴあの現状について語る仁多見浩支配人

それでも10月中旬の本格演劇「ゲルニカ」には400人近い観客が来てくれた。11月中旬に新潟出身の元宰相・田中角栄氏の人生を描いた3部作「闇の将軍シリーズ」は能楽堂で開催したが、これも熱心なファンが詰めかけ、新潟人の演劇好きを実感する機会となった。「コアなファンには本当に喜んでもらえた。りゅーとぴあのこれまでの活動がクラシックファンや演劇ファンを育ててきたことを実感できました」と仁多見支配人は語る。

<「何とか生のステージを」>

りゅーとぴあは、11月中旬まで何とか踏ん張ってきたが、ここにきて新型コロナ感染第3波の影響が心配になっている。「コロナによって、年末の風物詩だった新潟交響楽団のベートーヴェン・第九は中止です。コロナ禍の中で「歓喜の歌」の大合唱はとてもできない。今年はジルベスターコンサートで年越しの年だったんですが、これも中止です」と仁多見支配人は残念がる。それでも年末の12月27日にはチャリティーで「新潟応援ジャズコンサート」(仮題)を企画するなど、何とか生演奏を聞く機会をつくろうと懸命だ。

また、りゅーとぴあの専属舞踊団「Noism Company Niigata」は、これまでの17年間の活動で培った身体知を広く市民に伝えるワークショップなどを、11月1日から12月6日までの毎日曜日に6回の「オープンクラス」として開催している。さらに12月12日には愛知・豊橋市で勝負作「春の祭典」の公演があり、年明けの1月中旬から2月中旬にかけては、りゅーとぴあで「Noism0」と「Noism1」が2つの新作に挑む予定だ。

 写真=ノイズムの新潟公演(左)と豊橋公園のチラシ

仁多見支配人は「年度末まで予定していたものをこなすには、コロナの第3波が新潟で広がらないことが条件になります」と本格的な冬を前に表情を引き締めていた。

<青空記者の目>

新型コロナウイルスの感染拡大により、「新たな生活様式」への移行が迫られているが、そのことは文化の現場にも大きな影を落としている。りゅーとぴあでは、「生のステージ」を求める人々の欲求が大変に高いことを実感する場面も多いが、一方では文化・芸術の現場には近づかない人が増えていることも痛感せざるを得ないという。仁多見支配人は「生の舞台を熱烈に求める人がいらっしゃる一方で、コロナによる社会の分断というか、客離れは確実に起きています。コロナの終息後、どうやって一般の方をステージに呼び戻していくか―これを今から考えていかないと…。コロナの影響は想像以上に大きなものになる恐れがあります」と言う。

今回のシリーズでも紹介した、ナマラを主宰する江口歩さんも大都市圏などでのコロナ第3波に新潟が影響されることを強く警戒している。「新潟市に設置された文化の相談役、アーツカウンシルが今回のコロナ禍でも文化を支援する大きな力を発揮している。みんながコロナという障害に苦しんでいるとき、その悩みを聞き、少しでも解決策を提示できる福祉カウンシルのような相談機能が必要ではないか」と江口さんは提起する。江口さんらはコロナ禍での生きづらさも含めて語り合う「復活!!こわれ者の祭典~いつでもコロナさんと一緒に!」を12月26日午後1時から、りゅーとぴあの劇場で開くことを決めた。コロナと共に生きる、自己肯定パフォーマンスの舞台とするつもりだ。

写真=12月26日に開催する「復活!!こわれ者の祭典」のチラシ

「文化が明日を拓く?!」シリーズは今回でいったん終了します。「復活!!こわれ者の祭典」など、りゅーとぴあを舞台にした動きなどについては今後、随時報告します。

 

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