にいがた「食と農」の明日(1)

まちづくり

*にいがた「食と農」の明日1*

<ウィズコロナ時代 居酒屋の今①>

―稼ぎ時の年の瀬、第3波が直撃―

―「みんな自転車操業、心折れそう」―

 

<師走の飲食街にコロナ暴風>

年の瀬が迫るにつれて、新型コロナウイルスの感染が勢いを増してきた。「GoToトラベル」事業に固執してきた菅政権も14日、ついに年末28日から年明け11日までの間、全国一斉に事業を停止することを発表した。全国の中では比較的感染を抑え込んでいた新潟県も独自の「警報」発令の準備に入り、新潟市は11日に始めたばかりの「会食補助」を一時停止することを15日に発表した。例年、忘年会で稼ぎ時の師走に吹き荒れるコロナ暴風に、新潟の飲食店も吹き飛ばされかねない状況だ。

写真=コロナ感染の広がる師走にも、新潟駅南の「光のページェント」は有志の頑張りで点灯された。飲食店の灯も灯り続けるだろうか

飲食街では、「この秋にようやく回復の兆しが出てきたのに…」「みんな借金暮らし。自転車操業も、いつまでもつか」など悲愴な声が聞かれる。さらに17日には県の「警報」が発令された。

そんなコロナ暴風に飲食店はどう向き合おうとしているのか。新潟市を代表する居酒屋経営者の二人に今の状況を聞いた。その二人とは「一家」(いちや)グループを率いる品田裕志さんと、「五郎」チェーンを経営する和田亮さん。このブログでは「文化が明日を拓く?!」の第10回目で、「にいがた 未来・創新会」のトークショーに登場いただいた。この時はナマラ代表の江口歩さんの進行で、「新潟の居酒屋文化」について語ってくれた二人だ。今回は導入編として二人の簡単なプロフィールと今の思いの一端を紹介する。

写真=「創新会」トークショーで語り合う(左から)品田裕志さん、和田亮さん、渋谷修太さん(中央区のホテルイタリア軒)

<品田裕志さん=居酒屋甲子園で全国の頂点に>

品田さんは今から17年ほど前、32歳で「一家」をオープン。現在は新潟市内に居酒屋を3店舗、ベーカリー&カフェを2店舗経営する。2016年には、1700店舗近くが参加した「居酒屋甲子園」で全国の頂点に立った。また同じ年、全国47都道府県の食を集めた一大イベント「居酒屋大サーカス」を新潟に誘致、大成功させる原動力ともなった「居酒屋カリスマ」だ。

今の心境はどうか?まずは品田さんが12月13日にアップしたフェースブックの一部からお読みいただきたい。

<2020年 年末 12月 2週目が終わりました。もうすぐ年が明け、どれだけの飲食店の灯が消えてしまうのか想像もつきません。想像してみてください。夜、飲食店の灯りがついていない街を。前が見えないくらい真っ暗な街を。(略)ぼくたちはいつも街と共に活かさせていただいています。ぼくたちの仕事はひとの喜びが自分の喜びです。(略)それが飲食に関わる「飲食人」です。(略)ぼくはお客様が仲間と、同僚と、恋人と、家族と、楽しく笑って酒を飲み、美味しい!と食べてくれる光景を見ているのが大好きです。(略)みんな負けるなよ!(略)今日も心に太陽を☆☆☆☆>

この文章と共に、2016年の「居酒屋大サーカス」の動画がアップされ、飲食の仲間たちに「元気出していこう!」と呼びかけていた。

そんな品田さんは、「行政からの支援は基本的にはいりません。お願いしたいのはただ一つ、飲食店を悪のように言うことだけはやめてほしい。飲食の仲間はみんな自転車操業、心が折れ掛かっています。偏見だけはやめてほしいんです」と心情を吐露した。

<和田亮さん=ミシュランにも掲載>

もう一人の和田さんは、アルバイト時代を含め10年間働いた「五郎」古町店を事業継承して30歳で独立。以後「五郎」万代店や肉料理専門ワインバル「NIQ」など新潟市内で数多くの飲食店を経営し、「NIQ」はミシュランガイドにも掲載されている。飲食店プロデュース・コンサル業務をはじめ、熟成肉の卸や調理器具の販売など、幅広く手がけている「飲食のカリスマ」だ。新潟経済同友会の海外視察などで見聞を深めてもいる。「創新会」でのトークショーに先立ち、ミニ講演したフラー(スマホのアプリを得意とするIT関連企業)の渋谷修太会長とも組んで、今後の飲食の展開を考えている。

和田さんは、コロナウイルスが新潟にも飛び火して感染が拡大した春からコロナ仕様に店舗の改装にいち早く取り組んだ。「当時はまだ珍しくて、いろんなマスコミが取材に来てくれました。『国の支援は十分ですか?』と聞くマスコミが多かった。『足りない』『不十分』と言わせたかったのかもしれませんけど、『いろいろな支援があるので工夫して組み合わせれば大丈夫』と答えてきました」と言う。今も国や地元自治体の動向にはアンテナを張って機敏に対応している。新潟の飲食店の今後について、「今年度はさまざまな支援があり乗り切れると思うが、年度明けからは厳しい。正念場ですかね」と表情を引き締めている。

<青空記者の目>

新潟市民の財産である「居酒屋」に厳しい風が吹きつけている。記者もこれまで、仕事の疲れやストレスなどを居酒屋で癒し、仲間同士の居酒屋論議で新しいアイデアや仕事のヒントを得ていた。よそから人が来ると行きつけの居酒屋に案内し、「新潟の居酒屋はレベルが高いよ」と自慢してもいた。それだけにコロナによる居酒屋への影響は大変に気になっている。

「GoToイート」の地元版「食べに いGOて!」食事券の影響もあり、「10月には一息ついた」と言う店もあるが、「それもコロナの第3波で吹き飛びました」と嘆く声が今は大半のように見える。コロナへの備えをそれぞれの店で高め、「常連さんに感染させたら悪いから、よそから来たようなお客はお断りしている」という店、今まで以上に価格面でサービスする店、テイクアウトをやり出した店…。それぞれの店が、店の特長を踏まえて安全に配慮しながら、生き残りに懸命だ。

「にいがたの食と農」の明日を探るシリーズ導入部は、「居酒屋の今」を品田さんと和田さんに聞くことから始めたい。

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