いま学校は?8

まちづくり

*ウィズ・コロナ時代 いま学校は?*
 <新潟市内野小学校に見る⑧>

 ―「学校の働き方、見直す好機」―
―本当に必要な教育活動問い直す―

今月24日、新潟市の内野小学校(西区)では2週間の短い夏休みを終えて、授業が始まった。子どもたちの様子はどうか?―27日に内野小を再訪し、中村芳郎校長に話を聞いた。話は発展し、「ウィズ・コロナ時代」から「ポスト・コロナ時代」を睨んだ学校の教育活動のあり方にも及んだ。

<「比較的落ち着いています」>

「短い夏休みでしたが、子どもたちは休み前とあまり変わらない。比較的、落ち着いているようです。うちは、休みを短くして、お盆前の週まで授業をやって、宿題は出しませんでした。良い気分転換にしてくれたのではないでしょか」と中村校長は全般的な印象を語った。内野小では宿題は出さなかったものの、子どもたちに配った「内野の子どもの夏休み」には気を遣ったようだ。「夏休みのめあて」には、「お家の人といっしょに感染予防をしっかりしましょう」と書き加え、「じょうぶな体をつくろう」の項目には、「お家の人と感染予防について、相談をしましょう(マスクのつけ方・手洗いの仕方・人とのきょりのとり方・遊びや外出について など)と書かれていた。「きまりよい生活をしよう」の項目には10の注意事項の中に、「インターネット犯罪に巻き込まれないように、インターネットを使う時は家の人と約束を決めてやる。インターネット上に個人情報をのせたり人の悪口を書いたりしない」と書かれていたのが目を引いた。

<活気あふれる1年生の教室>

写真=内野小学校1年生の授業風景
初めての夏休みを体験した1年生の教室を見せてもらった。放課後学童保育の「ひまわりクラブ」のスペースを活用しているクラスもあった。夏休みで元気を充電してきたせいか、先生の話にしっかりと反応し、活気があふれている。特に担任の先生に一人ひとりが答えを見てもらう時は、先生の一言に「よっしゃ!」などと気合の入った掛け声が飛んでいた。

写真=先生に採点してもらう時はみんな大はしゃぎ

<猛暑で、5時間授業を4時間に短縮>

24日の週は、真夏以上の猛暑となった。このため内野小では当初、午後も授業をやる5時間授業を予定していたものを、4時間授業に短縮した。「給食の後、授業があると、子どもたちはどうしても屋外に出る。暑いし、消耗するので、給食を食べたら帰れるように4時間授業に変更しました」と中村校長。夏休みを短くして、新型コロナによる学業の遅れを取り戻していたので、柔軟な判断ができたようだ。

ひまわりクラブの利用者を見ると、お盆の週は少ない日で23人。多い日でも104人だった。夏休み2週目の17日からの週は、138人から161人と増加。さらに夏休み明けは230人近くとなり、ほぼ定数の240人に近づいている。このうち60人前後が、ひまわりのスペースではなく、学校の特別教室などを使い、密を避けて快適に過ごしている。

<コロナ禍のいま、働き方改革を加速>

内野小では前述したように、コロナ禍に見舞われる前からPTAや地域の協力を得て「教職員の働き方改革」を加速させていたが、中村校長は「コロナ禍の影響を見据え、働き方改革をさらに加速させていく必要がある」と思っている。「新潟市教委は、働き方改革にも全国に先駆けて取り組んできた。ある程度、成果が出始めてきたときに新型コロナの感染が拡大した。コロナの影響で、今まで当たり前だと思っていた学校のやり方が、通用しなくなっています。この時にもう一度、働き方改革に力を入れるべきと思う」と中村校長は言う。コロナ禍で、職員会議の持ち方も大きく変わった。特に地域など外との会議は軒並み中止や変更が迫られている。「その上、在宅勤務が教員もできることが分かった。教材研究などは家でやれますから。ICTを使ったリモート授業や予習型学習など、従来とは違ったやり方が必要になり、また可能になる。ここは改革の好機とも言える」と中村校長は語るのだった。

<教科担任制導入をバネに>

これまで日本の小学校では「学級担任制」を取り入れてきた。ここにきて文科省は英語や理科、算数などで「教科担任制」を取り入れる方向を打ち出した。中村校長は、「これも改革の好機とすべき」と考えている。学級担任制では、学級を担任する先生が休む時間がない。「学校の先生は忙しい」との定評が生まれ、特に小学校の先生を志望する学生がどんどん減っている。新潟県・新潟市でも教員試験の受験者が大きく減って社会問題化した。その上に、教育のICT化への対応に追われ、コロナ禍で教員も消毒作業にも従事している。「子どもたちが帰ってから、毎日30分は消毒作業をやっています。国は一部に消毒支援員をつけてくれましたが、コロナでますます少人数学級へのニーズも高くなる。小6、中3の少人数化への加配がこれから本格化するし、特別支援教育の対象になる子どもたちも増え続けています。やることは一杯あります」と中村校長。

<スクールロイヤーが必要に>

多くの学校で校長らが頭を悩ましていることの一つが「保護者からのクレームへの対応だ。一時は「モンスターペアレント」という言葉が世の中をにぎわした。新潟市では問題にきちんと向かい合うことと、学校側の負担を減らすことを考えて、任期付き職員として雇用してきた弁護士を、新たに「スクールロイヤー」として学校の問題に専念させることにした。中村校長は「この制度には非常に助けられています。『このケースは、法律的にこうです』と示してもらえるのは、大変にありがたい」と言い、「できる限り、先生方に本来の教育活動に専念できる体制を整えていきたい。これまでやってきた私たちの仕事を、コロナを機に全部棚卸しして、『これは本当に必要な教育活動なのか』、一つひとつ問い直すことが必要だと思う。だって、先生方の人生が豊かにならないと、子どもたちのためにも、学校のためにもならないですよね」と語るのだった。

<青空記者の目>

10年近く前からだったろうか。「子どもたちの数が減るのだから、学校の先生の数が減るのは当然」との意見が、霞が関の一部官庁からしきりに流されてきたことがあった。当時の全国市長会や政令市長会ではこれに対し、かなり激しく反論した。「特別支援学級の子どもたちの数が急増している」ことに加え、「これからは、さらなる少人数学級を進め、先生が子どもたちに向き合う態勢を整えることが必要」との考えからだった。「教職員の多忙化」は専門家の間では大きな問題となっていたが、保護者や地域の方に学校の現状がなかなか伝わらず、全国で先生方が疲弊してきた歴史がある。そこに一部保護者の「給食費の確信的未払い」や「常習的クレーム」などが拍車をかけた。新潟市では「教職員が、本来やるべき仕事に集中して取り組める環境づくり」を目指し、市教委が「働き方改革」を重視、推進してきた。今また、コロナ禍で「新たな教育改革」が求められている中、学校での「働き方改革」は重要な柱の一つとなっている。

 

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