実家の茶の間 新たな出発16

地域の茶の間

*実家の茶の間 新たな出発(16)*

<「活動7周年」 歩みを振り返る節目③>

 ―「みんなでつくる、周年事業にしましょう」―

 ―憩いの場が「作業場」に大変身―

<「これからを考える」の文字を追加

「実家の茶の間・紫竹」では、活動7周年の「記念展」を10月18日(月)から20日(水)までの3日間で開催することも決まり、その準備が急ピッチで進み始めた。4日(月)に実家の茶の間を訪れると、玄関に7周年の記念展を案内するポスターが貼り出されていた。実家の茶の間では、地域の方に茶の間の活動の様子や予定などをできるだけ知ってもらおうと、何かにつけて「ご案内」を掲示し、外からも見ることができるようにしているのだ。

写真(左)=「実家の茶の間・紫竹」の玄関に貼り出された7周年写真展のポスター。作成中のポスターには(右)「これからを考える」の文字が入ってなかった

このポスターは、お当番さんの中でデザイン力があって字もうまく、このようなポスターや案内版を描く時には必ずお声が掛かる高見久美子さんが担当したものだ。ただ、作業中に見た時には「祝7周年」の下というか、「写真展」の前のスペースが空白になっていた。「ここに、どんな文字を入れましょうか?」と高見さんが問い掛け、「活動を振り返る」とか「懐かしの」などの候補が挙がっていた。それがこの日見ると、「これからを考える」という文字が収まっていた。なるほど。写真展を単なる「回顧展」ではなく、実家の茶の間の今後の活動について「思いをめぐらす写真展にしていこう」とのお当番チームの思いが込もったポスターに仕上げたのか―そう考え、得心がいった。

写真=ポスターを描いた高見久美子さん。この日は写真選びなどの準備に追われていた

<雑然とする中、みんなで作業>

実家の茶の間の中に入ると、普段は「憩いの場・寛ぎの場」となっている空間に、写真展に飾られる数多くの写真が散らばり、雑然としていた。中にはテーマごとに分類したのか、写真類がいくつかのグループに仕分けされているものもある。実家の茶の間運営委員会代表の河田珪子さんは「まるで作業場のようでしょう。利用者の皆さんにも『あと何日かは、この状態になります』と、おことわりをしているんです。利用者の方からも手伝ってもらって、みんなでつくる写真展にしていきたいんです」と、笑顔で語った。

写真=いま、実家の茶の間では、茶の間の利用者もお当番さんも、みんなで写真選びを楽しんでいる

よく見ると、写真展のメインになると思われる「ある日の茶の間」とのタイトルで、いくつかのパターンがつくられていた。1枚の型紙に小さ目の写真ばかり20枚以上並べられたもの。やや大きめの写真2枚と小さ目の写真を20枚近く並べたもの。大き目の写真4枚と小さ目の写真を16枚配置したもの―などのパターンがあり、お当番さんたちが利用者の方に「どれが良いと思いますか?」と感想を聞いている。「そりゃ、やっぱり大き目の写真があった方がいいわね」と言う人。「大きい写真は、そんなに枚数ないんでしょ」と気にする人。「なかったら、引き伸ばして焼き増ししてもらったらいいわ」と提案する人など、利用者のお年寄りたちも写真展を準備する当事者になって感想を述べ合う。中には写真を手に取って、「子どもたちが集まっている写真はいいね。見ているだけで、元気になるわ」とか、「これは5周年の時の写真だね。こんなに人が集まっていたんだ」などの感想を述べ合う場面も。「この人、最近こないね。元気なんだろっか」と気に懸けるお年寄りもいらっしゃる。写真を眺めながらの共同作業は利用者を刺激し、活性化しているようだ。

<型紙に貼り、イメージづくり>

「壁に掲示するこんな感じになるんですよ」と、お当番さんがイメージ作りのために廊下に貼り出した写真を見せてくれた。こちらも「ある日の茶の間」とのタイトルが付けられ、実家の茶の間の日常を切り取った写真が型紙に貼られていた。大き目の写真は①茶の間での歓談の様子②台所でのお昼の準備③みんなでラジオ体操④裂き織りに励む方の様子―が映し出されていた。「やっぱり、このくらい大きい写真が交じると見栄えがするね」とお当番さんたちがうなずき合う。懇意にしている新潟医療福祉大学の先生からは「撮りおきしておいた写真を引き伸ばして、6日にはお届けするよ」との連絡も入ってきた。見栄えのする大き目の写真も数がそろうメドが立ってきた。

写真=イメージ作りのために廊下に貼り出された「ある日の茶の間」。1枚の型紙に20枚ほどの写真が貼られていた

<大切にする「精神」をカードに>

一方、普段は事務室に使っている部屋では、実家の茶の間が活動の基本精神とする標語・目標・モットー・呼び掛けなどを大きめの文字にしたカードが整理され、紙に貼り出す作業が進められていた。作業の担い手は地域のサポーターの皆さんで、大きな催しを準備する時には欠かせない戦力だ。

写真(左)=カードを貼る作業の準備をする(左から)伊藤資さん、島貫貞夫さん、武田實さん。河田珪子さんも加わって、写真展に向けての意見交換が始まる(写真右)

カードの文字を見やると、活動の呼び掛けとしては「どなたが来られても『あの人だれ!』という目をしない」「プライバシーを聞き出さない」「その場にいない人の話をしない」の3つ。実家の茶の間が目指す方向を示すものとして、「ここはサービスの利用者はひとりも居ない。居るのは場の利用者だけ。」「何をしてもいい。何をしなくてもいい。(ラジオ体操は全員参加)」「人と人 人と社会 がつながっている限り 生涯現役」などのカードがあった。「サービスの利用者はいない」とのフレーズは、河田チームがとりわけ大切にしているものだ。「サービスを受ける側、お世話する側」との垣根をなくし、「茶の間に来た人ができることをし合う」関係をつくり、「何をしてもいい。何をしなくてもいい」個の尊重に結び付けている。だから、実家の茶の間では「さぁ、皆さん。みんなで一緒に……をしましょう」などのスケジュール消化型ではない運営が特徴になっている。これが独特の「ゆったり感」を生んでいる。実家の茶の間では「みんなで写真展をつくる」と言っても、「みんな、それぞれができること、関心のあることで力を合わせる」やり方なのだ。

<大きな目標を示す2枚のカード>

そして、河田チームが実現を目指す大きな目標が2枚のカードに書き込まれていた。「空き家を活用して 地域の宝になる」と、「助けて!と言える自分をつくる! 助けて!と言い合える地域をつくる!」の2つだ。これらのフレーズは、実家の茶の間を訪れる方にとって目新しいものではない。しかし、こうやって並べてみると「訴求力」が出てくる。

写真=実家の茶の間が大切にしてきた言葉がカードにまとめられている

18日からの写真展では、訪れた方がこのカードを掲示したコーナーに目をやるだけで、実家の茶の間の精神が少なからず伝わるはずだ。7周年の写真展は、実家の茶の間の「これからを考える」スタートにもなりそうだ。

<青空記者の目>

 こんな風にして「実家の茶の間・紫竹」の「7周年写真展」の準備が進んでいる。時間が限られている中で必ずしも「効率的」とは言えない進め方だが、そこが「実家の茶の間流」なのだろう。茶の間を利用されるお年寄りも含めてみんなの意見をできるだけ聞きながら「写真展」との方向を定め、その「写真展」をまた、みんなの力でつくっていくやり方だ。その過程を踏む中で「写真展」は、7年間を写真で振り返る単なる回顧展ではなくなっていった。写真には映っていない「ご近所からの支援」にも光を当てていくことにしたし、実家の茶の間の目指すものを端的に示すフレーズを1カ所に集中掲示することで、「地域包括ケア推進モデルハウス」の本質を考える要素も付加していった。フレーズ・コーナーを見るだけで、実家の茶の間が単に居心地の良い「みんなの居場所」を運営しているだけでないことが分かるはずだ。

 実家の茶の間の7年間の活動で、大きな目標はどこまで叶えられてきたのだろうか?目標の1つ、「空き家を活用して 地域の宝になる」ことは、ほぼ達成されつつあるのではないか。2つ目の目標となる「助けて!と言える自分をつくる! 助けて!と言い合える地域をつくる!」境地まで進むことは、大変に難度が高い。国は、2025年度までに構築しようとする「地域包括ケアシステム」のイメージを「地域共生社会」と言い始めた。30年前から「地域の茶の間」に取り組んだ河田チームは、実家の茶の間の前身である「うちの実家」を20年近く前につくった時から「地域共生社会を『住民主体・ご近所単位』でつくろうとしてきた」のではないか。そして「実家の茶の間・紫竹」の7年間の取り組みの結果、「『助けて!と言い合える地域』を一定程度実現してきた」ように思える。それが今、実家の茶の間が国からも注目されている所以なのではないか。地元でも新潟医療福祉大学の研究チームが、この観点から聞き取り調査に着手、年度内には結果をまとめる予定だ。

 7周年の写真展をご覧になって「実家の茶の間の到達点」を大勢の方から確認してもらいたい。そこから、まさに地域包括ケア構築に向けての「これからを考える」ことが始まる。

 

 

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