いま内野小学校は?2

教育

*いま内野小学校は?(2)*

<PTA活動から地域活動へ「Smile Story」①>

―学校の草刈りから、地域愛が芽生えた―

―「地域と校長の熱量が乗り移ったのかしら」―

<ミニトマト販売は大成功>

7月1日、内野小学校(新潟市西区)の特別支援学級「さくら学級」が取り組んだ内野露店市でのミニトマト(さくらトマト)販売は大成功で終わった。さくら学級が農業体験でお世話になった植物工場「エンカレッジファーミング」(西蒲区)から仕入れたミニトマトを「さくらトマト」と名付け、子どもたちの絵を入れた独自のパッケージ(約20個入り)70袋近くを子どもたちが売り子となって販売したところ、20分で完売したのだ。

写真=「さくらトマト」の販売準備(左)と販売の様子。「スマイル」のメンバーも全面協力した

<「感動をいただきました」>

「子どもたちが、『さくらトマト、あっという間に売れたね』と大喜びしてくれて…。いい笑顔でした。お陰で、私たちもすっごい感動をいただきました」と語るのは、内野小学校PTAから生まれた地域活動団体「Smile Story(スマイル ストーリー)」の代表理事、綱本麻利子さんだ。副理事の高橋智恵さんは綱本さんの言葉にうなずき、「子どもたちの成長も感じました」と言う。それは、露店市での販売を終えた後、子どもたちが「さくらトマトを売ったおカネのうちから、近藤さんにおカネを払わなきゃいけないんだよ」と言った時のことだ。「これには感激しました。みんな、社会の仕組みのこともしっかり勉強してくれていたんだ」と高橋さん。

「近藤さん」とは、「エンカレッジファーミング」の近藤敏雄社長さん親子のことで、近藤さん親子は内野小の農業体験の依頼を快く受け入れ、子どもたちの体験に全面的に協力してくれた。今回販売したミニトマトもエンカレッジで穫れたものだ。「無償で提供しますよ」という近藤さんの申し出を、「社会勉強のためだから」と敢えて仕入れることにし、「おカネの回る仕組み」を子どもたちに学んでもらっていたのだ。

<露店市での販売へ、スマイルが全面協力>

綱本さんら「スマイル」のメンバーは、エンカレッジで1月にミニトマトを苗植えした時も、5月の収穫の時にも「さくら学級」の子どもたちに寄り添いながら行動していた。露店市で子どもたちがミニトマトを「さくらトマト」と名づけて販売することも、スマイルと学校側が話し合って実現したものだ。内野小の中村芳郎校長は、そんな「スマイル」の活動に大きな信頼を寄せる。「今回、内野の露店市で子どもたちがミニトマト販売できたのも、スマイルの皆さんの協力があったからこそです。出店の依頼や販売のテント張り、パッケージの絵を子どもたちが描くところまで、スマイルが大半をやってくれました」と中村校長は言う。

<「民間人校長」の力を実感>

では、そんな行動力のある「スマイル」はどんな風に誕生したのだろう。綱本さんらに聞いてみると、どうも商社マンから「公募校長」に転じた中村校長の存在と、内野という地域の盛り上がりが大きいようだ。始まりは、中村さんが内野小校長に赴任した2018年だった。その時PTA会長だった徳山啓輝さんは、中村校長の地域と学校をつなぐ行動力に驚きを感じた。「普通の校長先生とイメージがまったく違った。とにかく活動量がすごいんです。子どもたちや先生を活性化するという視点から、先生方の働き方教育に取り組まれ、PTAとしてもできることに協力しました」と徳山さん。綱本さんも「校長先生というと教育・学校のリーダーと思っていましたが、中村先生は経営者という感じ。動き方がそれまでとまったく違いました」と言う。

<「創立150周年」に向けて>

中村先生が内野小に来たタイミングも良かった。2022年度に「創立150周年」を迎えるため、中村校長が赴任した当時から学校敷地の整備や記念事業のことが大きなテーマになっており、中村校長の赴任初年度に150周年事業として100本の桜を植えることが決まった。内野小は、先人たちが学校敷地に桜を植え「さくら学校」の別名を持つ。「サクラの名所」と言われるだけに学校敷地が広く、この整備が植樹の前の大きな課題ともなっていた。「敷地面積が新潟の小学校で一番広いそうで、校地整備だけで大変なんです。『PTAだけではとてもできない』と思い、地域の方と話をして共同チームをつくることにしました」と徳山さん。中村校長と徳山さんがコンビを組み、地域の「愛桜会」(佐藤正人会長)などと相談。校地整備や桜植樹に向けて「うちの地域特別チーム」をつくることにし、徳山さんが会長に就いた。

写真=「創立150周年」に向けて校地整備に動き出した中村芳郎校長(左)と徳山啓輝さん(昨夏、内野小の裏山で)

<みんなの笑顔を求めて>

その頃から、綱本さんも高橋さんもPTAに関わり、後に副会長などの役職に就くことになる。「全体のことは分からず、まず学校の草刈りから入りました。日々、草刈りでしたかね」「PTAに環境部もありましたが、それを超えて地域と一緒に草刈りね。校地の草を何とかしないと、何も始まらないような状態でした」と二人は振り返る。PTA活動と共に草刈りを続けているうち、地域と学校を結び付ける中村校長のエネルギーと、「創立150周年」に向けて盛り上がっていく内野地域の熱量のようなものを感じた。「何か、校長先生のエネルギーが、こっちにも伝わってきちゃったみたいで」「地域と中村校長の熱量・エネルギーが乗り移ったのかしらね」と二人は顔を見合わせた。

写真(左)=次の活動に向けて映像資料の準備をする綱本さんと徳山さん (右)=「さくら食堂」のパンフレット

昨年のうちに植樹の場所も決まり、それに合わせて木の伐採などの準備も本格化した。そんな作業と並行して、綱本さんと高橋さんの「想い」も高まってきた。「PTAの枠内にしばられない活動を始めよう」「みんなの笑顔が生まれ、地域の笑顔が少し先の未来につながっていく活動にしていこう」と二人は走り出し、徳山さんらが伴走した。キーワードは笑顔=スマイルだ。それが「Smile Storyプロジェクト」の始まりで、今年6月には一般社団法人「Smile Story」に進化した。「スマイル」の動きは速く、多彩だ。

<青空記者の目>

「うちの地域特別チーム」が学校の周年事業を成功させるためPTAと地域との協働チームをつくったのだとすれば、「Smile Story」はPTAから地域に飛び出して新たなネットワークをつくろうとしているのだろうか。「コアメンバーは、まだわずかです」と綱本さんらは言うが、1年余りの「スマイル」の活動は多彩で、参加者・協力者も多い。海岸清掃、「さくら食堂」、移動型のMobileこども食堂とウイングを次々に広げる

「PTAの枠にしばられない」といっても、学校との関係が薄くなっている訳ではない。それは今回、内野小の「さくらトマト」販売に全面協力したことでも理解できた。中村校長との連携や「うちの地域特別チーム」との関係もさらに密になっているようだ。「スマイル」が目指す笑顔の先をもう少し追ってみよう。

 

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