実家の茶の間 新たな出発12

地域の茶の間

*実家の茶の間 新たな出発(12)*

<コロナ感染拡大 再度の活動休止④>

―「住民主体の運営は、利用される方の視点で」―

―「モデルハウスの位置付け」常に頭に―

<県の「特別警報」が全県に拡大>

「実家の茶の間・紫竹」が9月以降の運営について話し合った8月30日(月)、新潟県は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを重視し、新潟市などに発令していた「特別警報」を全県に拡大することを決めた。これによって9月3日から16日まで県立施設の原則休館が打ち出された。県の方針を受けて9月1日(水)、新潟市も市立施設のほぼ全てとなる450カ所の「休館」を決めた。目まぐるしい展開に、実家の茶の間はどう対応したのだろうか。

<新潟市の新方針に即時対応>

前回ブログの「追記」でも触れたように、実家の茶の間運営委員会の対応は素早かった。茶の間運営日の1日は、これまでと同じように「来る人、訪れる方は拒まず」のやり方で利用者や見学・実習の方に対応していた。運営委員会代表の河田珪子さんは午後から「さわやか福祉財団」主催の「いきがい・助け合いサミットin神奈川」の第1分科会にリモート登壇するため茶の間を「早退」したが、市の新たな方針が出されると、お当番さんたちと連絡を取って実家の茶の間の新たな対応を決めた。それは①週明けの6日(月)からは「休止状態」をさらに徹底し、当番さんもお休みとする②この新方針を関係者に電話などで連絡するため、運営日ではないが2日(木)に河田さんら集まれるメンバーは実家の茶の間に集まり、必要な作業を分担する―といったものだった。この方針は直ちに協働事業者の新潟市担当課にも伝えられた。

<「実験」で、参加料を無料に>

写真=実家の茶の間の運営変更について関係者に連絡するため2日に茶の間に集まり、作業する河田珪子さん(奥)らメンバー

急な方針変更の事後処理が気になって2日午後、実家の茶の間の様子を見に行くと、河田さんら4、5人のメンバーが落ち着いた表情で役割をこなしていた。特に週明け6日のお当番に当たっていた方には漏れなく、「当番は置かないことになった」旨をお伝えしていた。ここまでは「追記」で報告した通りだ。その後の展開はどうだったのか。

写真=大きな運営変更があった6日だが、実家の茶の間の雰囲気はいつもと同じようだった

6日朝、この日のお当番さんは連絡通り「詰めていない」状況だったが、河田さんをはじめ当番グループの何人かが顔を出していた。「やっぱり、知らずにいらっしゃる方がおられると思って…。やはり何人か、利用される方がいらっしゃいました。茶の間に入っていただいて、コーヒーなど飲んでいただきました」と河田さん。こちらが「休止中」の利用料100円を払おうとすると、当番グループの1人が「今日は無料です。実験的に、いただかないことに決めました」と、笑顔で伝えてくれた。「でも、タダは居心地が悪いような気がする」と口にすると、「確かに無料だと、利用者さんが逆に遠慮するかもしれません。だから『実験』と言っています」と、柔らかく反応してくれた。

写真=実家の茶の間は「休止中」でも誰かが活動をしている。この日はお当番、利用者、地域のサポーターが一緒に備品の整理をしていた

<気兼ねないように利用料を復活>

写真=実家の茶の間で常に変わりがないのは朝のミーティング。その日の当番さんが衛生面の注意事項などを読み上げ、常に新鮮な気持ちで運営に当たる

結局、「実験」は一日で終わった。8日(水)の運営日には利用料100円が復活していた。逆にこの日は「コーヒーはなし」。実家の茶の間は「休止」と「やむにやまれぬ利用」の間で揺れ動いている。「柔軟に対応するのはいいんですが、結構コロコロ変わりますね」との意地悪質問を河田さんにぶつけると、こんな言葉が返ってきた。「ここは一般で言う地域の茶の間ではありません。茶の間の機能はあるけれど、新潟市の地域包括ケア推進モデルハウスという位置づけが、その前にありますよね。だから、行政とは連携はしていくけれど、住民主体の活動ですから、利用される方の立場、視点で考えて、対応を決めていく―開けるか、閉めるか。開けるとしたら、どんな開け方をしていくのか。常に利用者の側に立って、対応を決めていかないと」と、河田さんは語ってくれた。これが、包括ケア推進モデルハウス運営の神髄ではないだろうか。

<青空記者の目>

 8日の利用者は7人ほどだった。その一方、常設されている5台の駐車場は満杯で、情報を交換したり、用事をこなしに来たりする方の姿も見られた。朝のミーティングで「来週から、お当番さん2人制は復活する」ことが決まったそうだ。「その日の雰囲気で決めているの。でも、みんなで決めていることですよ」と、河田さんは冗談めかして語った。

 実家の茶の間の日々は、「穏やかに、何事もなく」との思いと、「地域包括ケア推進のモデルハウスとしての役割を果たしていく」との使命感の狭間を行き来しているように感じた。地域包括ケアを推進するモデルハウスは、「介護予防」と「生活支援」の重い役割を担っている。医療・介護施設がコロナ禍の中でも「休止できない」ように、実家の茶の間も利用者が必要とする以上(「休止中」の看板を掛けてはいても)「できる限り、利用者のニーズに応えていく」―そんな覚悟を感じた9月の始まりだった。

 そして、10月に「実家の茶の間・紫竹」は7周年を迎える。これまでは、地域の方たちと賑やかに行われた周年事業だが、今年はどうなるのだろうか。コロナ禍の中、「地域包括ケア推進モデルハウスとは何なのか?」を問い直す7周年になりそうだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました