実家の茶の間 点描2023年5月

地域の茶の間

◆実家の茶の間 点描◆

2023年5月27日

―「助け合い効果」を見える化へ

「ポストコロナ」で新たな動き―

3年余にわたり猛威を振るってきた新型コロナウイルスの感染も、ようやく収束の方向に向かい、「ポストコロナ」を展望する動きが具体化してきた。新潟市の地域包括ケア推進モデルハウス「実家の茶の間・紫竹」でも日常活動が安定すると共に、視察・研修などが復活し始めている。2025年からの地域包括ケアの本格実施に向けて、全国の関係者の動きも活発化してきたのだ。運営委員会代表の河田珪子さんは「これからが大事な時期になりますね」と語っていた。

写真=実家の茶の間の最近の様子。ますます落ち着きが出てきた

<地元の学生さん14人が訪問>

写真=実家の茶の間で利用者と語り合う青陵大の学生

5月22日には看護や介護などの道を志す若者が多く学ぶ新潟青陵大学(新潟市)から学生12人が実家の茶の間を訪れた。全員が初の訪問だったが、すぐに利用者らに溶け込み、いくつものグループに分かれて懇談の輪が広がった。学生たちは「おじいちゃん、おばあちゃんらと久しぶりに話ができました。まるで実家に帰ったようで、楽しかった」とか、「日常の暮らしの中でどんなことに困っているか、どんなことを楽しみにしているかが聞けて勉強になった」などの声が聞かれた。

写真(左)=利用者と共に花を生ける学生さん (右)実家の茶の間に用意されているコーヒーやお茶も楽しみました

15日にも同大の男子学生2人が実家の茶の間を訪れていたが、「私たちが驚くほど早く、ここの雰囲気に溶け込んで、お年寄りたちと話をしていました。利用者の皆さんも若い方が来てくれると嬉しいみたいですね。会話が弾んでいました」とお当番の渡部明美さんが教えてくれた。引率役の茶谷利つ子・福祉心理子ども学部教授は、高齢者のQOL(暮らしの質)を高める研究などが専門だ。「これから地域包括ケアの時代に、みんなの居場所の役割は大きくなる。中でもここ『実家の茶の間・紫竹』は、初めて来た私たちを包み込むように迎えてくれて、すごいノウハウがあると思う。事前に河田さんからお話を聞いて、『大変な経験をお持ちだな』と感じていましたが、想像以上に良い雰囲気で素晴らしい所でした。学生たちも大きな刺激を受けたようで、何人もが『今度はプライベートで来てみたい』と言っていました」と振り返っていた。

<助け合い効果の「見える化」に驚き>

コロナ禍が収まってきて、全国の「居場所」が活動を本格再開させようとしている。実家の茶の間には、「これからの活動の具体的ヒントを得よう」と全国から視察・研修の要請が来始めている。そんな流れの中で注目されるものが、実家の茶の間を対象にした公益財団法人「さわやか福祉財団」の聞き取り調査だった。実家の茶の間では昨年10月、「運営8周年」の節目に利用者・お当番さんらにアンケート調査を実施した(これについては昨年10月17日のブログ「実家の茶の間 新たな出発・特別編」で紹介したので、ご参照いただきたい)。アンケート調査の内容は河田さんらが考え、新潟医療福祉大の石上和男教授が同大の学生さんの協力を得て50人以上から聞き取りをし、結果について分析を行った。その結果、最も特徴的だったのは、利用者もお当番さんも「茶の間に来ることで生活に張りが出たり、生きがいになったりしている」「少しでも誰かのお役に立ちたい、喜んでもらいたい」と思っていることが明確になったことだった。

このアンケート調査に、同財団の鶴山芳子常務理事は「すごく驚いたし、良い調査だと思った」と言う。鶴山さんが驚いたのには2つの理由があるようだ。1つは、実家の茶の間を利用する側も、お世話をする役のはずのお当番さんも共に、「茶の間に来ることを喜びとし、生きがいとしている」ことだった。まさに実家の茶の間のモットーである「ここにはサービスの利用者はいない。居るのは場の利用者だけ」が現実のものとなっていることだ。もう1つの驚きは助け合いの効果が「見える化」されていることだった。これについて鶴山さんは、「全国各地に広がってきた居場所では、多くの課題を抱えながらも人々がつながり、助け合う関係に発展してきています。つながりは赤ちゃんからお年寄りまで、あるいは障がい者や外国人も含めて多様なものともなってきていますが、介護予防などの身体的効果と違って、その効果を数字などで表すことが難しかったんです」と前置きし、「でも、実家の茶の間の調査は、助け合いの効果が『見える化』されています。おそらく設問の的確さと、学生さんがしっかりと聞き取りをしたためと思いますが、これはすごいことです」と、専門家の目から評価するのだ。

<広報誌「さぁやろう」に紹介>

このアンケート調査について、さわやか福祉財団では今回の聞き取り調査の結果も加えて、財団の広報誌「さぁやろう7月号」で紹介することにしている。さらに財団ではアンケート調査を土台として、さらに助け合い効果の「見える化」を広げようとしている。河田さんら助け合いの実践者、行政などの関係者、石上先生らと相談しながら、今後、新潟県内の「地域の茶の間」数か所で調査を実施。比較分析することで、助け合い効果を重層的に「見える化」し、居場所の重要性を浮き彫りにしようというものだ。

<さらなる調査へ、関係者会議>

写真=実家の茶の間で開かれた関係者会議(左から3人目が鶴山常務理事)

鶴山常務理事は5月に関係者会議を呼びかけ、河田さんらと共に調査内容や対象個所などを検討委員会方式で詰めながら、有効性を高めようとしている。鶴山さんは「助け合い効果のさらなる見える化を図ることで、居場所の必要性を多くの方に認識してもらい、『誰もがつながりのある中で安心しながら、しかも自分を活かして暮らしていける地域づくり』を広げていきたい。それが国の言う『地域共生社会』の推進につながると思う」と語っていた。これからの調査が注目される。

<青空記者の目>

コロナ禍が収まってきた今春、実家の茶の間を訪れる度に活動が安定し、かつ広がりを見せていることに気づく。青陵大の学生が訪れた22日には、重度の障がいがある方も茶の間に来ていた。河田さんをはじめお当番さんらはあっと言う間に簡易ベッドをつくり、その方が寛ぐ空間を用意した。昼食が終わると、さりげなく畳の上にお連れし、ほかの利用者の皆さんと同じ茶の間の空気感を味わってもらうようにしていた。

実家の茶の間には盲導犬を連れた目の不自由な方も来られるし、コロナ禍前には留学生ら外国人もよく姿を見せていた。鶴山さんは「〝様々な方の多様なつながり〟を一番実感できるのが、ここなんです」と実家の茶の間について語る。

一方で河田さんたちはさらなる展開を考えている。それは子どもたちだ。近くの江南小学校などでは総合学習の時間に実家の茶の間を活用していて、それをきっかけに子どもたちが茶の間に遊びに来るようになっていた。その姿が今はあまり見られない。「コロナ前は午後4時まで茶の間をやっていたので、しょっちゅう子どもたちが来ていた。今は3時まででしょう。なかなか子どもたちが来られないし、来てもすぐに茶の間が終わりになってしまう。ここを今後どうするか‥。次への課題でしょうか」と河田さん。実家の茶の間は「ポストコロナ時代」を見据えている。

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