実家の茶の間 新たな出発28

まちづくり

*実家の茶の間 新たな出発(28)*

<年明けにオミクロン株感染拡大③>

―「まん防」終わり、お昼を再開―

―「ここは大切な場所」理解広がる―

<「まん防」解除、翌日から通常運営>

「実家の茶の間・紫竹」の利用者が待ちに待っていた日がやってきた。新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大に対応する新潟県の「まん延防止等重点措置」が3月6日に解除されることが、2日の新潟県対策本部会議で事実上決まったのだ。

写真=「まん延防止」期間中の実家の茶の間。「お休み中も、当番は出ています」の紙が貼られていた

河田珪子さんを代表とする実家の茶の間運営委員会のメンバーは素早く動いた。3月7日(月)から茶の間を以前のように10時から15時まで通常運営することにし、参加者が楽しみにしているお昼も再開することを決め、早速、その準備に取り掛かった。河田チームが素早く動けるのは、1月21日から始まった県の「まん防」期間中にも茶の間に河田さんをはじめお当番さんが交代で詰め、様々な問い合わせに対応すると共に、不安や退屈を抱える参加者のために「1時間限定」で茶の間を開放していたからだ。

1月24日(月)からその態勢を取った理由について、河田さんはこう語っていた。「ここはいろいろな方が相談に来てくれます。まん延防止期間もその相談には応じていきたかったし、オミクロン株が広がっている時には参加者の不安も広がります。お互いの顔を見ることで不安が和らぐし、どこにも行けない方が外に出て気分転換することも大事なことですから」と。

<「カレーお持ち帰りできます」>

2月に入り、実家の茶の間の「まん防」への対応態勢は参加者にも理解が広がり、「1時間だけでも」という方が毎回20人近く訪れるようになった。そこで様々な「悩みごと」を語り合ったり、「困りごと」を相談したりする姿も見られた。以前より時間は短くとも小人数で寛げる雰囲気を、「本当に実家の茶の間のようだ」と笑顔を広げ、喜ぶ参加者もいた。お当番さんたちは、「こういう時でも、おいしい茶の間のお昼が食べたいね」という参加者の要望を聞き、小さなチャレンジにも取り組んだ。人気のカレー昼食を「お持ち帰り」してもらうことだった。

写真=お持ち帰りカレーの貼り紙(左)と、16日にカレーをつくるお当番さん

「2月16日 お持ち帰りカレーを作ります」との貼り紙が茶の間に貼りだされた。それを見た多くの参加者が「これは楽しみだ」「ぜひお願いします」など、歓迎の声を上げた。その16日(水)、茶の間の台所は久々に活況を呈し、50食ほどつくったカレーはみんなに食べてもらった。「今度は以前のように、茶の間でみんなと一緒にお昼を食べたいね」との利用者の声を聞いて、河田チームは「まん防が終わったら、すぐにお昼を再開できるように準備をしていきましょうね」と語り合っていたのだ。

<また、みんなでお昼を食べられる>

そんなこともあって、河田さんたちは「まん防」が終わる6日の翌日、7日(月)からお昼を再開できるよう、準備を進めていたのだ。そして迎えた7日、実家の茶の間では、また以前のようにBGMを聞きながらのお昼が再開された。おしゃべりはできない「黙食」ではあるけれど、みんなが「つながり」を確認しつつ食べるお昼の味は格別のようだ。

写真=「まん防」が終わり、昼食を楽しんだ参加者たち=3月16日

<地域外の団体からも「使わせて」>

「まん防」が終わると、そんな実家の茶の間に、参加者以外の人も出入りすることが増えてきた。例えば、地域外の老人クラブのリーダーたちだ。「3月になって紫竹から割と近い東明地区の老人クラブの方が来られて、『ここはいい場所ですね』と繰り返し言うんですよ。『じゃぁ1回、東明の老人クラブの会合にお使いになったらいかがですか』って言ったら、『それはありがたい。今度、是非お願いしたい』と言うんです。また、福祉関係に熱心な企業の方が先日は来られて、茶の間との連携の話をされていった。コロナ禍で大変なんですけど、『こういう居場所が必要だ』との理解は、逆に広がっているように思うです」と河田さんは言う。

写真=茶の間の掲示板に、地元の老人クラブの会合予定を貼り出す関係者(左) その脇には地元コミュニティ協議会から実家の茶の間に5万円寄付のお知らせが貼られていた

「最近、色んな方から声を掛けてもらうようになった。以前からネットワークづくりには積極的に取り組んできましたけど、今思えば点のつながりだった。ここに来て、面的に広がってきているように思うんです。コロナ禍で、居場所とか助け合いの大切さへの理解が広がってきているのかな…。そうだったら、嬉しいですよね」と河田さんは微笑んだ。

<青空記者の目>

 実家の茶の間のお昼は、カレー以外の日は「具だくさん」のお味噌汁がメインで、もう一品副食がつく。これは河田さんが家であらかじめ用意してくるものだ。煮豆の日もあれば、切り昆布などの日もある。3月16日に実家の茶の間に伺うと、お当番さんが「今日はのお昼はコロッケですよ。河田さんのコロッケは人気、おいしいです」と、弾んだ声で教えてくれた。

写真=河田さんが家でつくってきたコロッケで昼食の準備

 河田さんが家で「おかずづくり」をしてくる理由の一つは、実家の茶の間の台所の構造にある。ガスコンロは3つあるのだが、コンロの距離が近すぎて、大きな鍋を掛けるとほかのコンロが使えなくなるのだ。河田さんは「食事づくりをするお当番さんの少しでもお役に立ちたくてね、家で作ってくるようにしたの」と言う。お当番さんから、もう一つの理由を聞いた。「茶の間に来てから副食づくりをすると、河田さんがせわしなく立ち働いているようで、参加者がゆったりできない感じになる。それで、家で作って、持ってきてくれる決まりになった。実家の茶の間を開くときからの約束事だったようです」と教えてくれた。実家の茶の間の「ゆったり感」を出すために色々と工夫されていることに改めて気づいた。

 オミクロン株の感染拡大を乗り越えて、実家の茶の間は、また新たな出発の時を迎えている。

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