いま学校は?6

まちづくり

*ウィズ・コロナ時代 いま学校は?*

<新潟市内野小学校に見る⑥>
    ―地域のシンボル 桜の再生を―

―創立150周年に向け 100本植樹へ―

<引っ越して内野小校区に>

前回のブログで紹介したように、新潟市西区の内野小学校では令和4年度の創立150周年に向けて、「学校づくり桜植樹プロジェクト」が進行している。昨年度まで内野小PTA会長を3年間務め、今は「うちの地域特別チーム」の代表である徳山啓輝さん(51)に話を伺った。徳山さんは西区のお寺のご住職で、内野小学校の教育に共鳴して6年前、お子さんが小学校に上がる時期に内野小学区に引っ越してきたという。

「内野に来てみて、学校も地域もいろんな面で頑張っていることを実感しました。本当に、地域を愛している方が多い。でも、その動きが単発というか、なかなかつながっていないとも感じました」と徳山さん。学校はどんどん忙しくなるし、さらに安全面でも新潟市で不幸な事件が起きた。徳山さんがPTA会長だった2018年5月、西区で小学校2年生の女子児童が殺害されるという、あってはならないことが起きてしまった。「通学路の安全をどう守っていくか…。地域の方は『子どもたちのためなら、何でもやるよ』って言ってくれるんですが、一方では『登校の時間は大体分かるけど、子どもたちは何時に帰ってくるの?』と聞いてくる状態でした。情報がなく、つながっていない。学校と地域がもっとつながれば、大きな力が出せると思った」と徳山さんは振り返る。

<「つながるプロジェクト」始動>

そこで、徳山さんたちは「PTAが地域と学校をもっとつなげられないか」と考えた。学校に関われば関わるほど、「教職員が忙しく、さまざまなことに追いまくられている」と感じた。「学校における働き方改革が必要」との気持ちが芽生え、「保護者と地域が学校とつながることで、教職員の働き方改革も進められるのではないか」と考えたという。内野小は学校区が広く、通学路の安全確保は簡単ではない。学校の要望に沿って保護者と地域が通学路の安全確保に一体的に取り組む態勢づくりを進めた。住民やセーフティスタッフ、自治会の「見守り隊」から寄せられた情報を学校で一元化して共有し、危険個所や防犯の情報連携を図った。通学路の総点検会議や安全指導も学校・保護者・地域が「つながって行う」取り組みに進化させた。

学校は得てして良い点を強調するが、課題はなかなか伝えてくれない。内野小学校区は新潟市内の市立小学校では最も面積が広く、通学路の安全確保は他の学校よりも大変なことも徳山さんたちは初めて知った。民間人出身の中村芳郎・内野小校長は苦笑しながら、「学校は問題点を地域に伝えるのは下手ですね。私らの学校でも、残念ながらいじめもあれば、不登校もある。そんな課題についても率直にお伝えした方がいい」と言う。そんな中村校長の言葉に、徳山さんは「そうですよね。言ってもらった方が助け甲斐があるというか、みんなやる気になりますよ」と応じるのだった。

<「校地の整備、PTAでは無理だ」>

「学校と保護者と地域がつながる取組」が大きな効果を挙げることを徳山さんたちは実感し、「校地内の安全点検」にも乗り出した。多数の目で校地内を確認すると、広大な敷地の安全を確保するのは大変なことがすぐに分かった。裏山の林などは、手入れが行き届かず、荒れてしまっていた。徳山さんは「これは、保護者ではとても対応できないと言うか、PTAのやる域を超えている。整地や伐採などの整備作業は専門家じゃなければ無理だし、ここは地域に相談しよう」と考えた。名物の桜も年を経て、寿命がきたり、弱ったりしているものが目立った。地域に相談すると愛桜会のメンバーなどがすぐに反応してくれた。中村校長と徳山PTA会長(当時)、愛桜会の佐藤正人会長らが話し合い、「うちの地域特別チーム」を組織することを2年前に決め、徳山さんが代表となった。

<10月に桜を植える準備に>

折しも、2022(令和4)年度は内野小が創立150周年を迎える節目の年だ。「創立100周年の時は、地域の方が大型遊具の滑り台を学校に設置してくれました。それが痛んで使えなくなり、その撤去も話題になっていました」と中村校長。「子どもたちに親しまれた大型遊具のお別れ会をやって、替わりに地域の誇りでもある桜の木を100本植えますか」と愛桜会からの申し出もあった。「桜なら、子どもたちだけでなく、地域の方みんなが喜ぶ」と、方向が決まった。「学校づくり桜植樹プロジェクト」のスタートだった。

写真=内野小学校の桜植樹予定地に立つ徳山啓輝代表(右)と中村芳郎校長。裏山のスケールの大きさが感じられる
苗木を贈ってくれる団体も決まり、学校の奥手にある裏山に植樹することで6月には100本の植樹場所の選定も終えた。今月からは雑木の伐採や整地作業が始まった。土日・祝日に作業を進め、これまでに延べ50人近くが協力している。10月下旬には桜の苗木が届く予定で、内野小学校の目指す「やさしさあふれる『さくら学校』」へ、大きな一歩を踏み出すことになる。

<青空記者の目>

内野小学校では、学校とPTA,そして地域が一体となって、学校づくりから地域づくりが進んでいるようだ。学校運営で校長先生の力は大きいが、中村校長は新潟市教委の先輩たちから言われた言葉を今も胸の奥に大切にしまっている。それは、「学校長は、学校を地域から預からせてもらっているだけ。それも長い地域の歴史の、ほんのわずかな短い時間をね」という言葉だという。学校は地域の拠り所であり、子どもたちは保護者だけでなく地域からも育てられている―そんなことを内野小の桜は、これからも伝えていってくれるだろう。

 

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