にいがた「食と農の明日」22

まちづくり

*にいがた 「食と農の明日」(22)*

<ウィズコロナ時代 「農福連携」の今>

―大型植物工場でミニトマト収穫―

―内野小・さくら学級児童、「おいしい」と歓声―

<19人が収穫作業を体験>

5月7日、新潟市西蒲区越前浜の植物工場「エンカレッジファーミング(株)」に、西区の内野小学校「さくら学級」の子どもたち19人がやってきた。参加した子どもたちの多くが、1月にミニトマトの苗を仮定植する作業をこの植物工場で体験している。この様子は、ブログ「食と農の明日・15回目」で紹介したが、エンカレッジの植物工場は2ヘクタール規模で県内最大級だ。一方、内野小学校は西区における特別支援教育の推進校で、LD(学習障害)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害に関する特別支援学級が、新潟市最大の9クラスある。

自ら子どもたちを引率してきた中村芳郎校長は、内野小の学校課題の一つに「特別支援教育の充実」を挙げている。「いろんな子がいて、いろんなスタイルがある。特別支援教育は大事だし、内野小学校の特長にもなっています。そのことをPTAや地域の方に広く理解してもらうよう努めてきました」と説明する。民間人校長でもある中村さんは、持ち前のフットワークで域内外のネットワークを広げ、さまざまな取り組みにチャレンジしてきた。特別支援学級の子どもたちの感性を伸ばすため、農業を体験してもらうことも取り組みの一つだ。エンカレッジの近藤敏雄社長に依頼して、今年から農業や大地の力を特別支援教育に活かす「農福連携」に一歩踏み出した。1月にはミニトマトの苗を仮定植する作業がその第一歩で、ミニトマトの苗は4月には収穫できるまでに育った。この日は、子どもたちが心待ちにしていたミニトマト収穫の日だ。

写真=「エンカレッジファーミング」でミニトマトの収穫体験をする子どもたちと収穫されたミニトマト

<植物工場の広さに改めてびっくり>

子どもたちは、先生や父母、地域の方々と一緒に消毒を済ませた後、2ヘクタールと広い植物工場に入った。何回来ても、この植物工場の広さには驚かされる。3か月ちょっと前に仮定植したミニトマトの苗は大きく育ち、4月初めから収穫が始まったそうだ。これからが収穫の最盛期で、秋まで収穫が続くという。ここは土を使わない養液栽培で、日射量などに合わせてハウス内の温度や湿度、二酸化炭素濃度などを自動制御し、ミニトマトに与える養液量などもコンピューターで管理する。オランダ型の最新技術を導入した植物工場だ。農水省の「産地パワーアップ事業」の助成を受けて2017年9月に完工し、総事業費は11億円。エンカレッジでは同年末からミニトマト栽培を開始し、今季で4季目に入った。

<グループごとにミニトマト摘み>

巨大ハウスの中に入ると、子どもたちはビニールの手袋をして、5人ほどがグループとなり、大人の背丈よりはるかに高いトマトの列に分け入って、ミニトマト摘みを体験する。「ここのミニトマトはいつごろまで収穫できますか?」「摘んだトマトは持って帰っても良いですか?」などの質問が飛び、指導役を兼ねた従業員の方が丁寧に答えていた。エンカレッジでは年間400トンの収穫を目指しているそうだ。子どもたちの農業体験には、この日も先生だけでなくPTAの関係者も参加していた。さくら学級への理解を深めるため、中村校長の呼び掛けに応じた方々だ。

小一時間ほど、ミニトマト摘みを楽しんだ子どもたち。帰る時には、さらに収穫済みのミニトマトをエンカレッジからお土産にいただき、再び歓声を挙げていた。

<「空のテラス」ではイチゴ狩り>

写真=イチゴのハウス前で説明を聞く子どもたち(左)とハウス内でイチゴを摘む子どもたち

その後、近くの農家レストラン「空のテラス」(西蒲区)で昼食をとった後、今度はイチゴ狩りにも挑戦した。「空のテラス」は新潟市が農業戦略特区に選ばれたのを機に、規制緩和を活用して開設した農家レストランの一つだ。2016年の開業以来、ランチを中心にしたレストランが人気となり、地元の野菜・食品類の直売所も評判が良い。イチゴなどの収穫体験も受け付けている。子どもたちはレストランの裏手にあるビニールハウスに向かい、今度も入念に消毒をした後、ハウスの中に。「マスクをはずしていいよ」との先生の指示を聞いてマスクを取り、真っ赤に色づいた越後姫を摘んでは、口に入れていた。帰路につく子どもたちの表情は皆、満足そうだった。

<青空記者の目>

記者が新潟市長だった頃、三重県で「農業テーマパーク」を掲げ、「儲かる農業」に先進的に取り組んでいた「(株)伊賀の里モクモク手づくりファーム」のリーダーから話を聞いた。その時、「日本を代表する農業都市である新潟市は、6次産業化だけでなく、10次産業化に取り組むべきだ」と言われた。「10次産業化って何ですか?」と尋ねると、「6次産業にプラスして、農業や大地の力を子育て、教育、福祉、保健・医療の4分野に活かすことです」と言われた。

「なるほど!」と思った。新潟市ではその頃、「すべての子どもたちに農業体験と食育」に取り組むアグリスタディ・プログラムを始めていた。また、農業と福祉の相性が良いとの報告も各地で出始めていた。「農福連携」である。さらに、保健・医療では「医食同源」との言葉が古来ある。「これは、田園型政令市にふさわしい取り組みにできそうだ」と思い、意見交換を続けた。そのうちに「どうせなら、農業や大地の力を交流と環境・エネルギー分野にも活かすことにしたらどうか」「そうなると、6次産業化プラス6分野だから12次産業化になる。これは日本初の取り組みになる」と話が進み、新潟から「12次産業化」の旗を立てることにした。

12次産業化の一つ、農業と福祉分野を結び付ける「農福連携」は、幸い新潟市内各地で広がっていった。2015年には「「新潟市障がい者あぐりサポートセンター」を開設し、就労を希望する障がい者と労働力不足に悩む農業者・生産団体とを結び付けることに力を注いだ。その中で、農業生産法人「たくみファーム」のような素晴らしい例も出てきた。精神障がい者を含む障がい者が活躍しながら高品質のミニトマトを栽培し、栽培技術の世界水準となるグローバルギャップまで取得したのだ。とは言っても、「農福連携」で多い事例は農業体験を特別支援教育に活かすもので、内野小学校の今回の取り組みもその一つだ。また、「空のテラス」のような農家レストランは、まさに農業・大地の力を活かして交流に結び付けるもので、これも12次産業化の一例だ。これからも12次産業化の芽が新潟市で伸びていくことを期待している。

コメント

  1. Praillhar より:

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