実家の茶の間 新たな出発11

地域の茶の間

*実家の茶の間 新たな出発(11)*

<コロナ感染拡大 再度の活動休止③>

―「ここが開いているだけで、元気になれる」―

―朝の会合で、「再開へのあり方」話し合う―

<「家にいても、寝てばっかりだから」>

8月30日(月)の朝10時ちょっと前、「実家の茶の間・紫竹」を目指して佐藤静子さんは歩みを続けていた。80歳になった佐藤さんは足がやや不自由だが、表情は明るく気持ちが弾んでいるように見える。実家の茶の間に着いて玄関に入ると、「おはようございます」とお当番さんが元気に出迎えてくれた。お当番さんの検温を受けた後、連絡先など必要事項を記入している時も、「あら!佐藤さん。お久しぶり」と他の当番さんから声が掛けられ、佐藤さんも笑顔で応える。

佐藤さんは、実家の茶の間が新型コロナの感染拡大で18日から「お休み」に入った後、茶の間に顔を出すのは初めてだった。「もっと早く来たかったんですけど、『お休み』というから様子を見ていました。お当番はいらっしゃると連絡を受けていたし、家にいても寝てばっかりですから、今日は出かけてきたんです」と佐藤さんは嬉しそうに話していた。

<毎回のように研修や見学>

ブログの9、10回目で報告したように、実家の茶の間は「8月18日から9月上旬をメドに、活動をお休み」することを決めた。「活動休止」といっても月・水曜の運営日には、運営委員会代表の河田珪子さんをはじめ当番チームや地域のサポーターら10人前後が茶の間に詰めている。「お休み」を知らずに茶の間に来られた方らに気持ちよく対応し、視察・研修に訪れる方が毎回のようにいらっしゃるので、ちょっと見には「お休み」かどうか、区別がつかない。その状況は8月最終週になっても変わっていない。「お休み」を知らずに来られた方はゆったりとお茶を楽しみ、自らの都合に合わせて滞在時間を決めておられる。逆にお休みを承知の上で、研修や見学のため茶の間を訪れる関係者も運営日の度にいらっしゃる。例えば、茶の間の運営を勉強に来られる方や、福祉介護士を目指し実地研修に励む若者たちなどだ。生活支援コーディネーターが相談に来ることもしばしばだ。実家の茶の間は、お休み中も「みんなの居場所」として生きているのだ。

写真=「お休み中」でも、実家の茶の間はこのようににぎわっている(共に8月25日)

<15人ほどで真剣な話し合い>

この日も10時になると、お当番さんや参加者たちが輪になって恒例の朝のミーティングが始まった。「休止」になる前は9時半から開いていたものを、今は30分繰り下げている。この日のメンバーは河田さんと本日のお当番さん2人。それに自主的に詰めている当番チームの面々と地域のサポーターの男性、さらに佐藤さんら茶の間の参加者たちだ。この日は、実家の茶の間の活動を分かりやすく紹介した小冊子「誰でも参加できる『居場所』づくり」を増刷して茶の間に届けてくれた出版社「博進堂」の女性社員2人も加わって、総勢15人ほどになっている。

休止中でも、いつものように本日のお当番さんが「感染防止策」など実家の茶の間の活動注意事項を読み上げ、みんなで確認する。その後、「お休み中の実家の茶の間の運営について」や「お茶の間のお休みの期間をいつまでにするか」などについて、話し合いが始まった。

河田さんが口火を切る。「お休み中に茶の間にお出でになる方には、『30分くらいをメドに』と最初言っていたけど、どうでしょう?やっぱりお出でになる方のご都合があるから、こちらから『30分』とか、『そういう事情なら、あなたは1時間』とか、決めていくのはやはり無理がありますよね。それぞれの事情を踏まえて、柔軟に対応することでしょうか」と現在の対応について触れる。当番チームのまとめ役の1人、長島美智子さんが「お休みといっても、逆に『この際、見学したい』という申し出があって人が増えている時間帯もある。休みでも、密には気をつけないと」と発言し、渡部明美さんは「時間で区切るのではなく、いらっしゃる方お一人おひとりの状況や様子を見て、対応することですよね」と続けた。次いで、これまで午後2時から希望者がやっていた「ラジオ体操をどうするか?」の話になったが、「それは、その時いらっしゃる参加者が『やろうね』と言えば、やりましょう」と簡単に話がまとまる。

写真=8月30日、朝のミーティングで話し合う実家の茶の間のお当番さんたち(左)と、「お休み」を知らせる案内(右)

<「茶の間に来られて、ホッとしています」>

その後、この日の本題ともいうべきテーマに話が移った。「実家の茶の間のお休みをいつまでにするか、ですよね。メドは『9月上旬』としていましたが、『9月の中旬から、開きます』と言えるかどうかですね?お休みに入って初めてお出でいただいた佐藤さん、今の茶の間はどんな感じですか?」と、河田さんが佐藤さんに話を振った。「今日は、娘が『久しぶりに行ったら?』と勧めてくれたので、出かけてきました。ここに来られて、ホッとしています」と笑みを浮かべて語った。家がご近所の佐藤さんは、外から茶の間の様子を見、いつも茶の間のことを気に懸けていたそうだ。「茶の間が開いているだけで、元気になる方がいらっしゃるんですね。やっぱり行くところがあるのは大事。『お休み』の看板をどうするかは別にして、ここは皆さんがいつでも来られる場所にしておきたいですね」と河田さんが佐藤さんの話を受けて、こう答えた。

写真=久しぶりの茶の間で寛ぐ佐藤静子さん(左)と、生活支援コーディネーターの相談に応ずる河田珪子さん(右)

 

<難問は、お昼の提供と休止期間>

次いで、お昼の提供をどうするかに話題は移った。「お弁当を持ってくる方もいらっしゃるけど、お昼の提供はどうでしょう?」との河田さんの問い掛けに、長島さんが「懐かしがって話に花が咲いて長くいらっしゃる方もいますが、この感染状況では、食事をお出しするのはまだちょっと早いのでは」と反応する。サポーターの武田實さんも「もう少し、様子を見たらどうか」と方向づけをし、お昼はもう少し状況を見ることになった。

いよいよ「いつまでをお休みにするか?」との難問が話し合われる。渡部さんは「当面は休止状態を取りつつ、まずここに来ていただいた方にお茶を飲んでもらって、落ち着いていただくことでしょうか」と発言。当番チームの1人、桑原洋子さんも「今、とってもコロナが怖い状況なのでねえ。来られた方がお茶を飲んだり、利用されたりする分には良いと思う」と続いた。長島さんも「お昼も含めて、(国の緊急事態宣言期間である)9月12日の日曜日までは今のままで様子をみたらどうか」と話された。河田さんが話しを引き取って、「実家の茶の間が開いているだけで元気になれる、と言って下さる方がいらっしゃいます。早く休止状態は終えたいですけど、まずは様子を見ていくことにしましょう。今日はよろしくお願いします」と語って、この日の話し合いは終わった。

<青空記者の目>

 こうして「朝の話し合い」が終わり、8月最後の運営日となる実家の茶の間は何事もなかったように穏やかに時が流れ始めた。ただ、河田さんたち実家の茶の間のメンバーが話し合う様子を脇で見ていた博進堂の女性社員たちには驚きだった。「こうやって、みんなで運営を決めていくんですね。もう、ホントにびっくり。でも、とっても参考になりました」と、驚きが冷めやらぬ様子で感想を語っていた。

写真=「博進堂」の社員を紹介する河田珪子さんと、増刷された小冊子

 河田さんたちは「お年寄りたちは、おうちにばっかりいると、寝てばっかりになる」と心配はしているが、だからといって茶の間の再開を焦ってはいない。「柔軟に、一人ひとりに寄り添って対応する」との基本姿勢に沿いながら、運営については一人ひとりが積極的に発言し、みんなで方向づけをしていくのが「実家の茶の間流」だ。9月以降、実家の茶の間はどんな姿を見せていくだろうか。

<追記>

8月30日朝のミーティングで、「実家の茶の間・紫竹」をお休みする期間などについて話し合った河田珪子さんら運営委員会のメンバーは、9月1日に新潟市が「ほぼすべての市立施設を3日から16日まで休館する」との方針を打ち出したことを受け、実家の茶の間を「16日までお休みにする」ことを決めた。2日には河田さんらが実家の茶の間に集まり、そのことをお当番さんらに電話連絡するなどの作業に取り組んだ。この期間は、月・水曜日の運営日にもお当番さんを置かず、河田さんらが自主的に茶の間に詰めて、訪れる方たちに対応する。

写真(左)=16日までの「休止延長」を決め、関係者に連絡するため実家の茶の間に集まった運営委員のメンバー。(右)=お当番さんに電話連絡する長島美智子さん

電話連絡に当たった当番チームの1人、長島美智子さんは「運営日の当番がなくなりますので、取りあえず16日までの運営日でお当番を務める予定だった方に、その旨の連絡を取り終えました。参加者や関係者にも順次伝えていきます」と明るく語った。河田さんも「コロナ感染は、これからも何回か波があるでしょうから、その波に合わせながら柔軟に対応していきます」と、落ち着いた表情で語っていた。来週6日(月曜)からの運営日は、玄関は開けて訪れる方に対応しながら、衛生面に最大限配慮していくことにした。

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