茶の間再開2

まちづくり

「茶の間」再開2 

*「実家の茶の間・紫竹」再開へ*

 -再開は6月1日 「住民主体」で方針決定―

                  2020年5月27日

<市のチェックポイントをチェック>
戦略会議の2日後、27日(水)に河田さんと中心メンバーたちは「当番」という形で実家の茶の間に集まっていた。河田さんは市のチェックポイントを示しながら、「うちは、ほとんどがクリアできていますよね。ただ、当日9時までの予約制と、午前は10時から正午、午後は1時から3時までの2部制。ここはどうでしょうね?」と当番さんに語りかけた。「予約までして来るかしらね」「そもそも予約というやり方は、茶の間にそぐうのでしょうか?」と予約制に対する疑問が出された。「今までは朝10時に来て、ここが終わりになる午後4時までずっといらっしゃる方もいました。今度、2時間になると(これまでの利用料)300円というわけにはいかない」「これまでは、お昼(300円)をみんなで食べることを楽しみに来る人が多かった。午前、午後に分けて、どのぐらい来てくれるかしらね」などの声も挙がった。河田さんはそんな声に耳を傾けながら、「そうね、予約制というやり方はどうでしょう。住民主体で運営している茶の間に合うかしらね?ここはちょっと考えどころかな」とつぶやいた。

 <現場の状況を確認する貴重な場>

そんな時、市民生協の有償の助け合い「たんぽぽ」の責任者で、「お互いさま・新潟」の事務局メンバーともなっている杉山久美子さんも顔を見せた。「ここに来ると、いろんな話が聞けて参考になる。それで顔を出させてもらっています」と杉山さん。25日には江南区の一層の「支え合いのしくみづくり推進員」を務める佐藤連さんが訪れていたが、この日は秋葉区の一層の「支え合いのしくみづくり推進員」の白井孝明さんら推進員が3人集まっていた。推進員ら包括ケアの関係者にとって、実家の茶の間は現場の状況や声を確認できる貴重な場となっているのだ。

<「俺の実家はなくせない」>

話がさらに広がり出した時、利用者の中でも常連さんが2人、茶の間に顔を見せた。一人はご近所の武田實さん。家が近いので茶の間が閉まっている日でも庭木の水やりを担当してくれている方だ。もう一人は笠井三男さん。こちらも実家の茶の間の運営準備の頃から世話を焼いてくれている。実家の茶の間の開業周年事業などには、利用者代表として挨拶を河田さんから頼まれるのが定番になっている。笠井さんは近くの病院に通うついでに実家の茶の間の様子を見にきて、誰かがいると寄ることにしている。「きょうは、車も2台しかいないし、寄らずに帰ろうと思ったら、中から手招きする人がいたんで寄ってみたんだ」と笠井さん。河田さんが早速、再開にむけての話題を笠井さんにぶつけた。笠井さんは言う「私は、ここに来られている方たちによく会うんですよ、あちこちの病院でね。その時、必ず聞かれることが2つある。一つはまず、『茶の間はどうなるの?』ということ。もう一つは『また、茶の間でみんなとお昼が食べられますか?』、この2つです。私はこう答えている。『実家の茶の間は絶対になくならない。なぜなら、そこは俺の実家だから。俺の実家をなくすわけにはいかないでしょう』というのが一つ。もう一つは『お昼は当分食べられない。みんなの安全が一番だからね。当分は我慢、我慢』と。その答えでいいですか、河田さん」

 久しぶりに、河田さんや多くの当番さんと顔を合わせたせいか、笠井さんの言葉に力が入った。それを聞いていた河田さんは「笠井さんに、『ここは絶対なくならない、なくせない』と言ってもらって…。こんな嬉しいこと、励まされることはないです。『ここは俺の実家、ここが必要だ』と言ってくれている。もう、私、涙出そう。当番さん、笠井さんが言っていること、聞こえていますか」と、それぞれの仕事に精を出している5人の当番さんにも声を掛けた。そして、「きょうは、ここをこれからどうしていくか、みんなで話し合って決めていきましょう」と続けた。これが「住民主体」の意志決定のやり方らしい。

<「やってみなきゃ、始まらない」>

 予約制には当番さんの多くが疑問を呈した。では、予約なしで午前、午後の適正利用が担保できるのか、「数が増え過ぎたらどうする?」それとは逆に、「お昼も食べられなくて、利用する方がどれだけいるでしょうか?」「二部制にした時、利用料は従来通りの300円というわけにはいかない」「午前・午後に分けると、会いたい方に会えなくなるんじゃない?」―などなどの意見・疑問が次々と出された。これらを受けて、「お昼を自分で持ってきて、密にならないようにして、離れて食べるのまで止められるでしょうか?」と河田さんが提起する。「でも、時間制限は難しいよ。私もこの前は『30分ですよ』と言われたから何とか守ったけど、『お昼もいて良い』だと帰りませんよ」と笠井さん。「じゃぁ、お昼は当分ダメにしましょう。そうすれば正午でいったん打ち切りになるからね」との声。「でも予約制にしなくて、混んできたらどうするの。『きょうは帰って』とは言えないよ」の意見。「大広間は14、5人までにして、それ以上になったら廊下に椅子を置いておいたらどうだろう」「いざとなれば。子ども用スペースや二階も使えるじゃない?」などと話が続く。武田さんが「とにかく、やってみなきゃ始まらない。衛生面に最大限、気を付けてやりながら、状況を見て改善していくしかない。ここに長机が仕舞ってあるから、それを使って配席を工夫しましょうか」と着地点を探した。

<利用料は200円、午前・午後2部制で>

 河田さんが議論を引き取る形で「そうね、当分ですけど、時間は午前・午後制で2時間以内にして利用料は200円。家賃と光熱水費は市が負担してくれるけど、自治会費と保険代などは払わなければいけませんからね。6月1日に再開して、あとは様子を見ながら相談していきましょう。きょうは、そこまででいいからしら」と皆さんに諮り、この日の話合いは終了した。市との調整を図りながら、茶の間の再開に向けての取り組みが本格化してきた。6月の実家の茶の間には、どんな風景が広がっているだろうか。

 <青空記者の目>

 「住民主体で物事を決めていくのは難しい」と言われる。しかし、「実家の茶の間運営委員会」のメンバーは、「茶の間の再開」という難題を運営委員だけでなく、利用者を加えた中で見事に決定した。新潟市のチェックリストは大事にしながら、「住民主体で運営していく」との基本は守っていく。「私たちは自主的な組織ですから、指揮命令は似合わないのよ」と、河田さんはさらりと語った。そこが「実家の茶の間運営員会」のすごさと感じた。

 

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