文化が明日を拓く4

まちづくり

*文化が明日を拓く?!(4)*

<ウィズコロナ時代 りゅーとぴあは今>

 ―5月まで公演は全滅、6月から再起―

    ―「生への欲求、驚くほど強い」―

<ブロックごとに退席で時間>

10月8日、新潟市の「りゅーとぴあ」(市芸術文化会館)能楽堂では佐渡の篠笛奏者、狩野泰一さんのコンサート「MATURI~世界の風~」が開かれていた。当初、2月末に予定されていたものが、新型コロナウィルス感染拡大で大幅に延期され、今回ようやく開催に漕ぎつけた。座席は隣り合わせにならないように限定され、検温や住所・連絡先の記入などはマニュアル通りに行われた。係員も観客も慣れてきたせいか、あまり混乱は見られない。篠笛とギター、パーカッションなどの洋楽器との競演。観客たちは(おそらく多くが久しぶりの)生の音色に聞きほれていた。コンサートが終わると、「密」を避けるためブロックごとの退席となり、かなり待たされた人たちはコロナの影響がまだ大きいことを改めて実感することにもなった。

写真=新潟市を代表する文化施設「りゅーとぴあ」(右)と市音楽文化会館(手前)

<観客50人レベルから再開>

新潟市の芸術・芸能の殿堂とも言うべき「りゅーとぴあ」は、コロナ禍の下、どんな状況に置かれていたのだろう。仁多見浩支配人に聞いてみた。「3月から5月は自主事業も貸し館公演もまったくできませんでした。全滅です。6月に入って、入場制限などを厳しくし、最初は50人ぐらいの観客をお迎えし、再開しました」と仁多見支配人は語る。ようやく、コンサートらしいものが上演できたのは6月20日だった。りゅーとぴあの売り物、パイプオルガンの専属オルガニストにこの4月から就任した石丸由佳さんのお披露目コンサートを実施することにした。石丸さんは新潟市の出身。中学生の時に、りゅーとぴあのパイプオルガンの音色に初めて触れ、そこからパイプオルガンを研修。欧州で腕を磨いて新潟市に戻ってきた。

「本来なら、新潟市民に鳴り物入りでアピールし、専属オルガニスト就任を祝いたくなるシチュエーションなのに、石丸さんには2カ月以上待ってもらった。予防対策をしっかりやれば大丈夫、と判断して実施を決めたんですが、市民の皆さんがどう判断するか、お客さまがどのくらい来てくれるか、色々と考えました。来られた方にアンケートをしっかり取ることにして開催したら、400人以上が来てくれました」と仁多見さん。アンケートでも「この時期によくやってくれた」との記述が多く、中にはスタッフへの感謝の言葉を記す方もいたそうだ。「お客さまも待っていてくれたんですね。感動してくれた方も多かった。本当にやって良かった」と仁多見支配人は振り返る。

写真=コロナ禍の下での、りゅーとぴあ運営について語る仁多見浩支配人

<アンケートを活かし改善続ける>

県外からアーティストを呼べない状況を逆に利用して、7月4、5日には新潟ゆかりのアーティストに集まってもらい「ステイ・アット・ニイガタ・コンサート」を開催。「1日4組で企画し、これも好評でした。国のガイドラインは出ていましたが、さらに安全・衛生面には最善を尽くそうと、職員からも発案してもらい動線などを工夫しました。『こんな風に対策を立てながら、コンサートをやりました』とホームページで全国に発信し、関係者には喜ばれたと思います」と仁多見支配人。その後も事業をやる度にアンケートを実施。「安全面で100%はないかもしれないけれど、お客さまの声を聞いて修正すべきはどんどん改善していこう」との姿勢で館を運営した。その後もアンケートを続けてきたが、安全面の評価は「十分やっている」「ここまでやっていれば概ね十分」との反応が85%以上。「やりすぎ」との反応も5%程度あるという。

7月からは自主事業はほぼこなせるようになった。「できるだけ事業は中止にしないで延期とし、違約金を取られないようにしました。それでも満席時の半分以下しか入れられないので、収支の面では大変。2分の1にもならない。夏までに7千万円から8千万円くらいの赤字が出、市議会から補正予算を通していただきました。それで自動検温器なども整備しました」と仁多見支配人は言う。

<新しいガイドライン基に工夫>

9月に入り、イベントなどについて国の新たなガイドラインが示された。「それによれば、うちの館は100%観客を入れて良いことになりますが、そう簡単ではありません。クラシックなどを好む方はお年寄りが多く、コロナに敏感です。既に売り出しているチケットでは知り合いの方も1席空けて指定してありますが、ガイドラインが変わったからといって、空いている真ん中の席に知らない方が入ったらどうでしょう。嫌ですよね。市の新たなガイドラインを参考に新しいやり方を工夫していく必要があります」と仁多見さん。

<「細胞に大きな刺激与える」>

「文化施設は今も大変に厳しい。特にうち(新潟市芸術文化振興財団)のような公益財団法人はおカネを貯めておけないシステムになっているので、このような非常時は本当に大変です。各地のライブハウスや新宿の劇場などでクラスターが起きると、ものすごく社会的影響が出る。これが最も怖いですね」と仁多見さんは言う。ただ、りゅーとぴあを再開以来、来場いただいた大勢の方からいただいた反応は、りゅーとぴあ関係者を感激させてもいる。「これだけ生の演奏、生の舞台を求めてくれる方々がいらっしゃる。文化・芸術の力を改めて感じました。りゅーとぴあはコロナ禍の下でもこれだけの支持をいただいている、そう思うと熱く込み上げるものがあります」と仁多見さん。高齢者がコロナで外に出る機会が減ることによって認知症が進んだり、介護度が上がったりするのでは、と専門家は心配している。「りゅーとぴあなどの文化施設に来ていただければ、単に外へ出るだけでなく、お洒落をされるし、お茶やご飯もお召し上がりなる。そうすると、細胞を刺激する効果はおおきいですよね」そう語る仁多見支配人は、文化の力に後押しされる自分を感じている。

<青空記者の目>

新型コロナの感染拡大で各地の文化・芸術施設は大打撃を受けている。ようやく、夏から秋にかけて、新たな安全・衛生施策を講じ、「やっと動き出し始めた段階」という館が多い。そんな中で、新潟市の「りゅーとぴあ」は果敢に新たな道を切り開いているように見える。さらにコロナ禍は今後の新潟市の文化施設全体の運営を考える良い機会にもなっているようだ。仁多見支配人は「りゅーとぴあ自体の運営もこれがベストなのかどうか、事業のやり方を抜本的に見直す機会にしたい。りゅーとぴあと音楽文化会館の使い方はこれでいいのかとか、区の文化会館などとの連携もさらに深める必要があるのではないかとか、コロナのお陰で色々なことを考えさせられています」と苦笑しながら語った。1年後、「コロナのお陰で、こんなことができた」と多くの文化施設が言えるよう、今こそ改革の好機と捉えてほしい。

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